教室でいじめっ子のカバンを思いっきり踏みつけた
いじめはエスカレートしていった。机にかけていたカバンを蹴り落として踏まれたり、椅子に画鋲を置かれることもあった。しかし、香苗さんは学校に通い続けた。
いつものようにお風呂に入るときにこっそりと踏まれた後ができたカバンを洗おうとして洗面所に入ったところで父親と出くわし、そのときにかけられた言葉に香苗さんは救われることになったという。
「父とは以前よりも会話は減っていましたが、それでも母親から私の学校のことを聞いていたのか、顔を合わせる度に『大丈夫か?』と声をかけてくれてはいたんです。私は大丈夫としか答えていなかったですけど。
汚くなったカバンを父に見られたとき、父から『そんなやつ殴って来い。お前が何をしたとしても、学校にも先生にも相手の親にもいつでも頭を下げてやる』と興奮気味に伝えられました。心配されるよりもずっとうれしかった言葉でした。この人は絶対に私の味方でいてくれるんだって思いました」
その後にしばらく何もできなかった香苗さんだが、いつものようにカバンを踏まれたときに相手の机を蹴り倒し、机の横から落ちたカバンを思いっきり踏んだ。相手は一瞬ひるんだが、すぐに手を出してこようとしたのでその手を思いっきり叩いてやったという。
「おとなしくしていたものの、私は元々周囲の女子たちよりも体格がよかったので(苦笑)。
結局、両方の親が呼び出されることになりましたが、父は謝りにちゃんと学校まで来てくれて、相手のご両親にいじめのことをつめ寄って謝らせてもいました。
その後、私の父親の強面キャラと、私が教室で正当防衛ながら暴力を振るったことの噂が回り、いじめはなくなりました」
香苗さんは小学校のころに学校に呼び出された母親にその後ひどく叱責されていたことで、「学校の問題で親に迷惑をかけることが怖かった」という。しかし、父親の一言で救われた。いじめに遭っている子は強い劣等感を持っていることが多い。すべての子に共通することではないが、親からそのままの自分を信じてもらえた子は強い心を持つことがあるのだ。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。