父親に反発しながらも、その影響を引きずってしまう

「今思えば、父親への精一杯の反抗だったんでしょうね。兄は反抗期が激しくて、中学時代から愚連隊みたいなところに出入りしていて、警察のお世話になることもあった。そんな兄に対し、父は『世間様に申し訳がない』と鉄拳制裁を加え、母に対しては『お前の育て方が悪いからだ』と暴力をふるっていた」

兄は高校を出るとすぐに渡米する。

「父の言いなりになる母も嫌悪していたみたいで、葬式も帰ってこなかった。兄は向こうでアメリカ人女性と結婚して子供もいます。古着やレコードの輸出業をしたり、日本料理店で働いたりして、そこそこの財産を築いています。私との兄弟関係は良好ですよ」

兄は父の影響から早々に脱出した。一方で、弟の文明さん自身は、両親の影響を引きずった。

「だから見合い結婚をしたのかもしれませんね。20代で女性と知り合いましたが、私のことをいいという女性は、多くがキャリアウーマンでした。私はおとなしい女性が好きなのです。できれば、容姿も地味なほうがいい。妻はまさにそういう女性でした」

亭主関白・貞淑な妻という、昭和の家庭のステレオタイプが、文明さんの理想だった。

「妻との間に一男一女を授かり、家のことはみんな妻に丸投げしていました。出産した日も会社で仕事をしていました。そんな時代だったんですよ」

【自分の父親のように暴力を振るわないからいい父親だと思っていた……~その2~に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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