姿が見たい、声が聞きたい
その後、元奥様を尾行すると、そこから近所の韓国料理店に入って行きました。私たちも後を追うと、奥様はこの料理店のオーナーであり、このコロナ禍で、から揚げのデリバリー事業を立ち上げ、メイン事業にしており、売り上げを維持していることがわかりました。
自宅はお店の近くの中級クラスの分譲マンションでした。
源一郎さんにこの報告をすると、「よかった。ホントによかった」と大泣き。報告の日はタオルを持ってきて、そこに顔をうずめて泣いていました。
そして「山村さん、申し訳ない。娘と妻が動いている……生きている姿が見たい。声が聞きたい。日曜日、一緒に行ってはいただけないだろうか」と相談を受け、一緒に行くことにしました。
日曜日の早朝に、お嬢様の家の前で待機。源一郎さんは、調査車輌の後部座席に変装して待機。
お嬢様の旦那様がカーシェアポートに行き、クルマをピックアップ。元奥様とお嬢様、お孫さんを乗せて、出発。
後部座席で源一郎さんはずっと号泣。アウトレットモールで買い物している姿、孫がクレープを食べている姿を見ては、「娘にそっくりだ」と目を真っ赤にしています。
おばあちゃんと、娘夫婦と孫がアウトレットで買い物している……普通の風景です。しかし源一郎さんにとっては、「私が道を間違わなければ、私もあそこにいられたんだ」という後悔と贖罪の風景。絞り出すように、「平凡な日常こそが宝なんです」と言った言葉に重みがありました。
その後、4人は温泉施設に寄っていましたが、「僕はもう見られない」と言い、先に帰京。帰る道すがら、「とても今日は満足しました。名前もわかったし、どんな暮らしをしているかもよくわかりました。本当にありがとうございます」と感謝をしていました。
男性の探偵が、「今の源一郎さんなら、再び家族になれるんじゃないでしょうか」と言ったら、「私にはまだまだ足りません。今、4人で幸せなのに、私が入ったことで不幸になったら申し訳ない。私は怖いんです。私が死んだら、遺産が娘に渡るように手配しています」
そう笑顔で語っていました。娘と孫がいることがわかってから、ますます仕事に打ち込み、最大規模の売り上げを記録したと嬉しそうに報告してくださいました。
※本連載はプライバシーに配慮し、一部内容を変えております。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/