文/鈴木拓也

画像はイメージです。

長年飼っていても、猫にまつわる疑問は尽きることがない。

店に行けば、いろいろなキャットフードが販売されているが、どれがいいのか(あるいはどれでもいいのか)。前触れもなく、飼い主の脚に頭を押し付けてくるのはなぜか、などなど。

なんとなく推測できるものもあるが、いちいち調べるのも面倒で、知らないままにしておくことが多い。でも、「きっと知っていたほうが、猫のためにもいいのだろうな」と思い直したり……。

そんな愛猫家の数々の疑問に答える書籍が刊行されたので、紹介しよう。書名は、『どっちが正しい? 幸せになるねこ暮らし』(ワニブックス)。著者は、猫の難治性疾患の基礎研究に携わる「獣医にゃんとす」さん。漫画はイラストレーターのオキエイコさんが担当している。トピックごとに四コマ漫画と詳細な解説がついた、情報満載の1冊だ。

キャットフードはドライかウェットか?

本書の体裁はクイズ方式となっている。飼い主のよくある疑問に、「獣医にゃんとす」さんが答えを出すかたち。

第一問は、「ドライフードとウェットフードはどっちが良いの?」

A. ドライフード
B. ウェットフード
C. 両方与えるのが良い

答えは、Cの「両方与えるのが良い」。キャットフードは、ドライフードとウェットフードに大別されるが、それぞれメリットとデメリットがある。ドライフードだと、安価で保存がきく点がメリットとなる。ただし、水分含有量が少ないため、尿路結石や特発性膀胱炎といった疾患のリスクが高くなるという。ドライフードを主食とする猫の場合、ウェットフードを主食とする猫の15.9倍も尿路結石にかかりやすいと、「獣医にゃんとす」さんは指摘する。

対してウェットフードは、水分を効率よく摂取でき、カロリーが低くて肥満防止にもなるメリットがある。一方で、開封後の保存期間が短く(冷蔵庫で1~2日)、歯石がつきやすく歯肉炎になりやすいというデメリットがある。また価格も比較的高めだ。

そこで、どっちかのみに決めてしまうのではなく、「ミックスフィーディング」という両方を与えるやり方がすすめられている。

猫には幽霊が見えているのか?

「猫が何もないところを見つめるのはなぜ?」という、飼い主がしばしば抱く素朴な疑問もある。

A. 人間には聞こえない音を聞いている
B. 人間には見えない幽霊が見えている

答えは、Aの「人間には聞こえない音を聞いている」。夜になって猫が、何もない一点をずっと凝視していることがよくある。「もしかして霊か!?」と、勝手におびえてしまうのは、飼い主あるあるだが、猫が気にしているのは音というのは意外。

実は、猫の聴覚は人間よりもはるかに優れているそうだ。耳を動かすこともできるので、音の方向を正確にとらえる能力もたけている。「獣医にゃんとす」さんは、「人間には聞こえない高い周波数の音や微細な音を聞き取って」、音源を見つめているのだと説明する。

また、人間には見えない何かを見ている可能性もあるようだ。基本的に猫の視力は、人間の7分の1程度だが、暗夜での視力は優れている。さらに、紫外線が見えている可能性を示唆した研究もある。微細なほこりに光が反射して、それが猫には気になる存在になっているのかもしれない。

猫の慢性腎臓病は早期発見が難しい?

人間だけでなく猫も長寿化しており、シニア猫の健康管理に悩む飼い主は多い。そのため、猫の健康に関するトピックも、本書では充実している。

例えば「猫の慢性腎臓病について正しいのはどっち?」

A. 初期症状が出やすく早期発見されやすい
B. 初期症状がほとんどなく早期発見が難しい

答えは、Bの「初期症状がほとんどなく早期発見が難しい」。ご存知のように、慢性腎臓病は、猫が非常にかかりやすい病気。15歳以上の猫だと約8割は罹患しているそうで、飼い主としても気になるところ。厄介なのは初期症状がほとんどない点で、腎機能が残り約3分の1までに減って、やっと症状として見えるという。

対策として「獣医にゃんとす」さんは、定期健診の重要性を力説。次のように解説している。

特にSDMAやクレアチニンといった血液検査項目や尿検査(尿比重・タンパク尿の有無:UP/C)が有用です。高値でなかったら安心というわけではなく、基準値範囲内でもだんだん上昇していないかどうか、時系列で追うことが大切です。
また超音波検査(エコー検査)で腎臓に異常がないかチェックしてもらうと安心でしょう。早期に発見し、治療介入(療法食など)することで、進行を遅らせることができます。
(本書200~201pより)

また、普段からの飼い主によるケアも大切。まず、水分はしっかり摂るようにする。できれば歯磨きも行う。歯周病は慢性腎臓病のリスクを高めるからだ。

がんも、腎臓病と並んで猫の死因の上位となっている。乳がんの罹患率は下がっているが、増えているのがリンパ腫。1か月で5~10%以上体重が減ったり、嘔吐や下痢が増えるなどの異変が見られたら、早めに動物病院で受診するようアドバイスがなされている。

このように本書には、飼い猫に関する知識がたくさん詰まっている。普段の疑問を一気に解決するには、ぴったりの1冊だ。

【今日の猫と幸せに暮らすための1冊】
『どっちが正しい? 幸せになるねこ暮らし』

獣医にゃんとす著、オキエイコ画
ワニブックス

文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 

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