関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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家の存続が至上命題だった
今回、私に相談してくださったのは、直哉さん(仮名・75歳・会社役員)です。戦前までは超名家だったという直哉さんは、英国紳士を思わせるダンディなスーツ姿で、私たちのオフィスにいらっしゃいました。
東京の都心部のマンションで生活しており、同じ棟の別室に息子夫婦が住んでいるとのこと。自宅には人間国宝の作品や、さまざまな美術品があるらしいです。美しいものに囲まれて生活している人の気品のようなものが、全身から発散されている魅力的な男性です。
「相談というのは、長男が3年前に結婚した嫁のことなのです。長男は現在38歳で、会社役員をしています。私たちが厳しく育てたせいか、全く女性に免疫がなかった。30歳のときから見合いをさせたのですが、“結婚相手は自分で見つける”と言って断ってきたんです」
直哉さんにとって、家の存続は至上命題。長男に子供が生まれないことには、1日も安心することができない。ただ、長男はのんびりと独身生活を楽しんでおり、周囲にいるのは男友達ばかり。それをやきもきしながら見守っていたそうです。
「それでずっと急かせており“誰でもいいから結婚して子供を作れ”となった3年前に、“この人と結婚する”と嫁を連れてきたのです。こちらは高望みはしないけれど、せめて大学を出ているとか、定職についているとか、きちんとした女性を望んでいたんです」
しかし、息子が選んだのは、派手な性格でブランドとクルマが大好きな、元読者モデルの女性。年齢は息子よりはるかに年下で当時22歳。知り合ったのはマッチングアプリで、彼女の若さとセクシーな魅力の虜になってしまったのだと言います。
写真を見ていただくと、どこかのクラブのようなところで、大きなグラスにシャンパンを入れて飲んでいる写真でした。目がパッチリとしており、バストが大きくウエストがくびれている抜群のスタイルの持ち主。四国方面が出身地で、高校を中退してから読者モデルをしていたとのこと。
【家にある美術品に嫁は興味を持ちだした……次ページへ続きます】