文/鈴木拓也

インターネットの進歩や社会環境の変化などに伴い、「お店をもつ」ことへのハードルはぐっと下がった。

もちろん、事業が立ち行かなくなって廃業するリスクはある。それでも、「好きなことでお金を稼ぐ醍醐味は何物にも代えがたい」と、開業を志す人の背中を押すのは、働き方多様化の専門家として活躍する三宅哲之さんだ。

三宅さんは、著書『ワクワクを仕事に変える 「小さな商い」のはじめ方 人生が楽しくなる開業のすすめ』(メイツ出版)のなかで、次のように続ける。

だれにも命令されることなく自由にやりたいことができ、自分のペースで働くこともできます。価値観をともにするお客様に出会えたり、仕事を通じて新しい人に出会えたり、これまでの会社員時代とはまったく異なる新しい世界が広がるでしょう。
それが、「自分のお店をもつ」ことの最大の魅力です。(本書11pより)

三宅さんの言う「お店」とは、一等地に大店舗を構えるといった、巨額の資本を要するものではない。一人でも運営していけるスモールビジネス全般を指す。そんな「小さな商い」を立ち上げて軌道に乗せる秘訣が、本書には記されている。それはどんなものだろうか。一部を紹介しよう。

まずは人生の背景を掘り起こす

「自分の店をつくろう」と思い立ったら、まず何から始めればいいのだろうか?

地元の起業セミナーに参加すると、資金調達やビジネスプランの作り方といったものから教わることが多い。

しかし、「これが間違いのもと」だと三宅さんは言う。

三宅さんが、開業の準備期間に最初に行うべきこととして挙げるのは、「人生の背景を掘り起こす」というもの。なにか難しい話に思えるが、実際はシンプルなものだ。やり方は2通りあるが、うち1つを取り上げる。

まず、静かな環境で、幼少期から現在までを振り返り、「ワクワクしたこと・熱量が上がること・今でも情景が浮かぶ出来事」と、逆に「辛かったこと・失敗・挫折・苦労したこと」を、時系列で漏らさず書き出す。

この作業は億劫に感じるかもしれないが、「今の自分の価値観や考え方がどうしてできたのか、自分を形づくっている背景」が把握できるという。

これによって、過去の経験の中から、自分でも気づかなかったやりたいことが、おぼろにでも見えてくる。

過去を振り返って時系列で書きだす(本書51pより)

その次に行うのが、「自分軸を定める」。紙に逆三角形を書き、2本の横線を水平に引いて3分割する。一番上のエリアには、先のワークで見いだした自分が好きなことを書く。その下のエリアには、なぜ好きなのかを2つ3つ書き、一番下のエリアにも同じく、なぜそれが好きかを1つ書く。例えば、好きなことが「海外旅行」なら、「いろいろな光景に出会いたい」「新しい文化を知ることができる」「新しいことに挑戦したい」と下のエリアに記し、一番下には「新しい発見ができる」というふうに。

三宅さんによれば、「自分の過去を振り返ると、新しい自分に出会える」という。このワークを端折ってしまうと、起業してから何か困難にあうと挫折しやすい。長く事業を続けるには必須のステップとなる。

開業当初は「3階建て」で稼いでいく

「小さな商い」の開業は、あくまでもスモールスタートだが、それでも資金面でのリスクヘッジは欠かせない。

この点に関して、三宅さんの第一のアドバイスは、ずばり「6か月無収入でも食べていけるお金を貯める」だ。つまり、1か月の生活費および開業後にかかる諸経費をあらかじめ見積もり、6をかけた金額を確保しておく必要がある。

もちろん、開業早々に売り上げがあれば、全く無収入ということはないだろう。しかし、最初の1年は赤字となった事業者は、約4割という統計もある。蓄えが乏しいまま出費がかさむ生活となれば、「冷静な判断もできなくなっていきます」と三宅さんは言う。

もう1つ、収入面で考慮しておきたいことに「3階建て組み立て」というのがある。本書で三宅さんは次のように書いている。

3階「Love work」本業(自分がやりたい商い)で稼ぐ
2階「Like work」今できることで稼ぐ。業務委託など
1階「Rice work」失業保険、貯金、アルバイトなど
の3つの合計で収入を組み立てていきます。
最終的に目指す姿は3階のみで生活していくことです。Love workつまり「愛すべき仕事」です。でも初期はなかなか3階で稼げないので、不足分を1階と2階の収入でしのぐという考え方です。(本書100pより)

三宅さんの教え子の中には、「商いが軌道に乗るまで、7割はアルバイト仕事で稼いでいた」という人もいる。スモールスタートといえども、それなりの覚悟が必要という身にしみる例だろう。ただ、お金になるなら何でもよいというわけでなく、アルバイトの仕事内容も3階の本業と何かしら関連するものを選ぶよう、三宅さんはアドバイスする。

* * *

三宅さんは、これからは「新しい個人商店の時代」だと語る。それは、上場や地域一番店を狙うような華々しさはない代わりに、自分のやりたいことを実現し、周囲の人も幸せにする身の丈に合ったもの。スモールビジネスの立ち上げを考えている方に、読んでほしい1冊だ。

【今日の人生を一歩前進させる1冊】
『ワクワクを仕事に変える 「小さな商い」のはじめ方 人生が楽しくなる開業のすすめ』

三宅哲之監修
メイツ出版

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 


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