一代で財を成し、家族に不自由させない生活をさせてきた
タイミングをみるのに長けており、阪神淡路大震災の後に、世田谷区内にある大きな家を購入。バブル期の半分近くの価格だったという。
「もともと勝負勘は強いし、証券会社にいたから“世の中の人と逆をすると儲かる”という感覚が身についている。妻にも『あなたのやっていることは見ているとハラハラする』とよく言われていた。あとは小学生の頃から、“元をとる”という意識は強かったかもしれない。例えば、マンガを買ったら、友達に1回10円で貸せば、32人に貸したところで元がとれる……とか。ムダな金と時間はなるべく使いたくないからね」
“元をとる”この意識が光男さんの根幹に根を下ろしている価値観かもしれない。
「それは失敗を恐れないことにもつながっている。ビジネスをやっていると、何かが起こった時に、どう対処するかを常に考えている。もちろん僕もたくさんの失敗をして、社員や取引先や家族に迷惑をかけてきた。でもそれは、お互いの経験値になると思う。だから息子たちのことも妻のことも叱ったことがない。失敗を何事もなくとらえ、失敗以上の学びを得て前に進むことが大切だから。でも、妻の失敗は、どう受け止めていいかわからない」
光男さんが言う、「妻の失敗」とは、浮気だ。自宅に帰るのが遅くなった妻を不審に思った光男さんは探偵を手配して素行を調査させる。
すると、見知らぬ男性とホテルに入る妻の姿がそこにはあった。
「今の調査報告は動画なんだよね。知らない男と腕を組んで、楽しそうに表参道を歩く妻を正視できなかった」
【浮気は裏切り……愛し合っていたはずの妻はもういない~その2~に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。