母親に“今さら”頼れない
結婚して5年目のときに亜紀子さんは妊娠。その頃には亜紀子さんの両親、姉の状況は大きく変わっており、亜紀子さんは里帰り出産をすることなく、女の子を出産した。
「両親と姉が離婚して、実家は手放して母親は姉と3人の子どもと一緒に暮らしていて、父親は一人暮らしをしていました。だから、里帰りする家はなくなっていたんです。姉の一番小さい子はまだ2歳で、母親と協力して3人の子育てをしていて、私のことはたまに様子を見に来てくれるくらいでした。まぁ、仕方ないですよね。義母も様子を見に来てくれてはいたんですが、どこまで頼っていいのかわからなくて。振り返ると、妊娠中や出産直後は孤独でしたね。夫も仕事が忙しい時期だったし」
「子どもができれば、姉のときのように母親はきっと私に構ってくれる」という思いが亜紀子さんの中にあったそうだが、母親から連絡が来ることも、母親に連絡をすることもできなかったと振り返る。
「子どもができたからって急に母親との距離が縮まるわけないんですよね。姉と母親は元々の関係があったからこそなんだなって。絶対助けてくれるはずと、母親に対して期待してしまっていた自分に気づきましたね。あと、母親の中にある、姉と私の差にも気づきました。こんなときに伯母がいてくれたらなと、子育ての合間に伯母のことを考える機会が増えましたね」
亜紀子さんは現在、夫の転勤により大阪を離れ、都内で3人暮らしをしている。母親や姉とは年末年始や大型連休のときに連絡を取り合うくらいだという。
幼少期に親との交流時間が少ないと、人への信頼感や安心感を抱きにくくなる可能性が高くなるという。人への信頼感を抱きにくいまま大人なると、人に頼ることができない、相手の顔色をうかがいながら行動することが増えるとされている。亜紀子さんは「母親から連絡が来ない」と訴えると同時に「自分から母親に連絡できない」とも言っていた。そんな亜紀子さんの心の拠りどころは伯母だったが、その伯母を亡くしてからは、慣れない都内での環境もあって何でも一人で抱えてしまっているという。
子育てに関われる時間は意外と少ない。調査結果にあるように、平日の1~2時間で信頼関係がうまく形成されるのかは難しいように感じる。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。