長女には、人に言えない「クセ」がある
久美子さんの長女は、35歳で5歳の息子がいるという。夫と同じ名門私立大学を出て、海外留学もしていたはずだ。
「あのときはウチも羽振りがよかったから、娘たちの望むことは何でもしてあげられたの。主人は自分がお金で苦労したから、娘たちには絶対に同じ苦しみは味あわせたくないと、なんでも買ってやり、なんでもさせてやった。長女は成績が良かったから、同じ大学に行かせたかったんでしょうね。“俺の大学さえ行けば、人生バラ色だ”って、娘が高校時代のときは教育パパをしていた」
内容を聞くと、なかなかの管理教育だった。長女はバレーボールが好きだったが、高校時代は一切禁止。文化祭も体育祭も基本的に参加させず、勉強一辺倒の生活をさせた。
「付属の中学も、高校も落ちたからあの人なりに必死だったんだと思う。その反動か、大学に補欠で合格してからは、長女は徹底的に遊んだ。2回留年して、やっとのことで卒業したんです。でも2留じゃどうにもならないから、アメリカのカレッジに留学させたんだけど、ずっと寮に引きこもって、ゲームしていたんですって」
25歳になった“新卒”の女子学生に社会は冷淡だ。“まとも”な就職先はなく、なまじ学歴がいいだけに、雇用側も足踏みする。そして、やっとのことである工場の契約社員になったという。手取りの給料は11万円で、当然、自活はできない。
「それでもウチの主人がえらいのは、“オマエの教育が悪いから、娘がバカなんだ”とは言わないこと。そういう男の人って多いじゃないですか。主人はえらかったんだな、と思います」
長女はその工場も1年たたずに辞めてしまい、ファミレスのアルバイト、スナックやメイドカフェの店員など、職を転々とする。そして、29歳のときに大学の同級生と授かり婚した。相手は都心に貸しビルを何棟か持つ資産家だという。
「どうなるかと思っていたら、“きちんとした”家に嫁げて本当に良かった。主人と胸をなでおろしていたんですが、まさか離婚するとは」
離婚の原因を聞くと、「言いたくない」という。久美子さんに「不倫とか、いろいろありますよね」と聞くと「違うのよ……でも、これは知ってほしいから」と話し始めた。
「長女の離婚の原因は、万引きなの。2年くらい前から、レジ袋が有料化されたでしょ? もともとそういうことがあって、何回か警察のお世話になったことがあったんだけど、2年前から常習的になっちゃって。あちらのご両親が“面倒見切れません”と、のしを付けて返してきたの」
【娘の顔色に気を付けつつ、少ない貯えで娘と孫を養う……後編へと続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。