大学時代にカルト宗教にハマる
息子はちやほやされて育ち、自分から何もできない子に育ってしまったと言います。
「意思がはっきりしない、ぼんやりした子でした。父親から見ても少しもかわいくない……というのも、親戚が中心になって子育てをしていたので、私と女房は蚊帳の外。上の娘2人は、“私たちはこの家にとってゴミってことでいいですか”と2人とも高校から全寮制の学校に入ってしまい、1年に1回、電話が来るのみ」
その頃からネット通販が普及し、信也さんのお店でモノを買う人は激減。息子が幼い頃は欲しいものをなんでも買い与えていたけれど、それもできないようになったそう。
「ボーッとしていた息子が“大学に行きたい”と言うので、田畑を売り払って進学させたらカルト宗教にハマってしまい、そこから脱退させるのも大変でした。教団の施設まで行き、命の危険を賭して、修行中だという息子を連れだしたのです。息子はガリガリにやせ細っており、病院に担ぎ込むと軽い栄養失調と脱水症状で5日ほど入院しました」
息子は大学を中退し、しばらく実家でブラブラしていたそう。高齢になった義父は息子に「店を継げ」と繰り返していましたが、息子はやんわり拒否。その間、息子は軽犯罪で逮捕され、このショックで義父はは心労がたたって急死。
「息子は、義父……つまり自分の祖父の葬式で、終始にやにやしていました。私がしかりつけると、“東京に行く”と出て行ってしまうので、何も言えません。妻は息子が地元に戻って来てから、心療内科通いが始まり、先日、がんが見つかりました」
幸い、手術は成功しましたが、本調子からは程遠い。そんな信也さんも持病の胃潰瘍があり、息子に戻ってきてもらいたいのだそう。
「今ではお店は1日に1人、客が来るかどうか。それでも店を存続させなければ、ご先祖様に申し訳ない。店はそのような状態ですが、不動産があり、なんとか生活はできるので、息子に帰ってきてもらいたいんです。東京の住所は知っているのですが、私たちはどうもそこに行く勇気がない。以前行って、息子に嫌がられたトラウマがありまして……」
子供に嫌われたくない親御さんは多く、直接話ができないため、カウンセラーとの相談素材として私達の報告書を活用する例もあります。
信也さんの話は、ほかにも多くの話せない内容もありそうでしたが、調査に入ることにしました。
【母のように慕っていた女性とは……その2に続きます】
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/