幼い頃の娘の写真を見て泣く

娘が爆発するのは、「ママの何が悪かったのか」と聞いたときだという。

「決まって“全部だよ”と言うんですけれど……私、子育てに失敗しちゃったんですよ。幼いころから、私から受けたという、身に覚えがないことに対する恨み言を言われても、今更私はどうしようもない」

娘は5歳の頃の恨み言まで引っ張り出してきて、愛子さんを責める。しかし、時間は巻き戻せない。

愛子さんがそのことを伝えると、「私がこんなに苦しんだんだから、あんたは今から苦しむんだよ! 一緒に苦しめ!」と言ったり、「心理を学びたいなら教えてやるよ」と4時間以上正座で勉強させられて、問題を間違えると、机を叩かれたり、大切にしていた陶器の人形を1個ずつ割られたこともあったという。

「30歳くらいまでの5年間が地獄でした。友達に相談していたら、娘から携帯電話を取り上げられて、連絡先を消されたこともありました。夫が帰ってきて娘のことを伝えると、“オマエの育て方が間違っているんだ”と一言。あのときは、幼い頃の娘の写真を見ては“こんなにかわいかったのに”と泣いてばかりいました」

心のよりどころだった昔の写真は、知らぬ間に娘に捨てられていた。ざっと伺っただけでも、娘も愛子さん自身もかなりのお金を使っている。

同じ年の夫は、今年定年を迎える。愛子さん自身はずっと専業主婦をしてきたので、働く気はない。

「先日夫から、ウチにいくらあるのか、と言われて、200万円くらいだというと、びっくりしていました。夫としては、私が貯金しているのだと思っていたから、何もしていないというんです。ってことは、この200万円と年金で生活しなくてはいけないということなのかと」

夫の退職金は以前ほど望めず、財形はとっくに解約しているという。 「老後、頼りにしていた娘は、派遣にしかなっていないし。同級生は立派なところにお勤めして、お母さんにもなってみんな頑張っているのに、ウチの娘はなんだかんだとケチ付けて、転職を繰り返している。結婚の話をするとキレるし……私は育て方を間違 ってしまったんでしょうか」

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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