夫婦の決め事に「お正月は別々に過ごす」を追加
1年目のお正月に初めて夫の義実家に一緒に帰省することに。新幹線と在来線を使って片道約3時間。日帰りは難しく茉優さんの希望で実家近くのホテルに宿泊することにして31日、1日の2日間滞在することにした。しかし、ホテル宿泊に義両親はいきなり噛みついてきたそう。
「義両親は『もったいない』と言いました。夫は2人兄弟の次男なのですが、『長男一家はそんなことしなかった』と長男家族の前で言われ、『最初だから他人行儀なのかしら』とか色々言われました。部屋も布団も用意してくれていたみたいでホテルをキャンセルしろという空気だったんですが、なんとか『来年はそうします~』と言って逃げ切りました。
そのとき浮かんだのは義姉のこと。あの人、本当に無理して頑張って来ていたんだなって思いましたね」
2年目は約束通りホテルを用意せずに義実家へ帰省。2人で仲良くする義母と長男の妻、長男の子どもと仲良く遊ぶ義父と夫の兄弟を横目で見ながらの「苦痛の2日間だった」と振り返る。帰省後に夫婦で話し合い、翌年からは別々に帰省することを決めたという。
「談笑していても気を遣われているのがヒシヒシと伝わってきました。私もうまく会話に入れなくて、中学のときのいじめの中で受けた無視を思い出しましたよ。私は仕事を続けていたので、せっかくの大型連休にこんな思いをしないといけないのかと結婚したことを後悔したほどです。
帰宅後に夫と話をして、自分の実家で兄嫁に気を遣ってしまったこと、孫がいないことを含めて、お互いの実家に帰って気兼ねなく過ごそうと言いました。夫は反対することなく、そうだねと言ってくれました」
気まずい思いもあり、義両親には年末ぎりぎりに夫から話してもらって別々に帰省することに。夫からは「普通だった」と連絡があったそうだが、長男の妻からはまったく異なる報告があった。
「夫の兄の奥さんから『お義父さんとお義母さん、寂しそうだったよ』と連絡がありました。そして、私の考えが理解できないようで、『1年に一度くらい顔は見せるのが常識』とか、『結婚したんだから身内でしょう』と。最初は優しい言葉だったのに、私が考えを改めないからかだんだんヒートアップしていって……。常識、常識とうるさかったことだけ覚えています。私みたいにできないことが悔しかったんじゃないかな。そこからコロナ禍もあり、一度も義実家に行っていません」
結婚すると「身内になったのだから」、「親戚なのだから」という言葉で義実家への帰省が当然のよう考える人は多い。そう考える人は多いものの、どちらの立場からも「所詮は他人」、「気を遣う」などの言葉もよく耳にする。
昔の“普通”が今には通用しないことも多い。しかしその普通を変えるためには、茉優さん夫婦のように片方だけではなく両者の気持ちの歩み寄りが大切なのではないだろうか。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。