取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
今回お話を伺った茉優さん(仮名・39歳)は14年間付き合った男性と35歳のときに結婚。付き合っている間のお正月はお互いに実家で別々に過ごしていたこともあり、結婚後に共に帰省したのはコロナ禍もあり、1年だけだという。
「私たちは、夫婦で話し合ってお互いの実家で別々にお正月を過ごそうと決めたのです。それなのに、周囲からはグチグチ言われて……。義実家のほうも気を遣うだけなのに、誰が決めたかわからない形式に囚われすぎだと思います」
兄の結婚により、お正月は気を遣う空間になった
茉優さんは埼玉県出身で、両親と10歳上に兄のいる4人家族。兄妹の年齢は離れているものの、2人は実の兄妹。母親はその10年の間に流産、死産を経験し、茉優さんは意図せぬ妊娠だった。無事に産まれてきてくれたことに家族は大喜び。兄も茉優さんを溺愛しているという。
「私は本当に平凡な子なんですけど、容姿も普通で学校の成績も並レベル。それなのに、両親や兄が私のことをかわいいとかできるとかいっぱい言ってくれていたから、どこにそんな自信があるんだと今なら思いますが、相当プライドの塊のような子でした。
そんな最悪な性格でも小学校のときはうまくいっていたんですけど、中学になっていじめの対象になってしまって……。中学のときの2年間弱は毎日学校にいくのが辛くてたまりませんでした」
家族には一切いじめられていることを伝えず、家では明るい自分を演じ続けたことでその2年間を乗り切れることができたと振り返る。それだけ家族との時間は大切だったが、その空間が不安定なものになったのが、兄の結婚だった。
「兄は大学を卒業して家を出ていたんですけど、近所に暮らしていたから週に2度ほどは家で晩御飯を食べたりしていました。そのときに学校のこととかよく話を聞いてくれていたんです。中学のときのいじめについては伝えられなかったけれど、楽しい学校生活を送る嘘の自分のことを本当だと思い込むことでなんとか学校生活を送ることができました。自慢の兄の自慢の妹でいたいという思いが強かったので。
そんな大切な時間が、パタッとなくなったのは兄が結婚してから。少し遠くに引っ越したこともあるけど、絶対に嫁が実家とあまり交流するなと言っていたんだと思います」
兄の妻が茉優さんの実家にやってくるのは正月とお盆休みだけ。家族だけでのんびりできる時間が、家族全員が気を遣う空間に変わったという。
「うちの家族は一応おせちなどは食べるけど、初詣も3日ぐらいに行って、それまではこたつでダラダラするのが定番でした。年賀状の仕分けをして、誰が一番多かったかなどを競い合ったり、じゃんけんをして負けた人がこたつを出て食べ物を取ってくるとか、うだうだ過ごす時間は最高でしたね。それが家の中で外出着のまま座って、こたつではなくテーブルでおせちを食べて、1日に初詣に行き、寒いのを我慢しながら行列に並ぶ……。
義姉のことは嫌いではなかったけれど、大型連休は自分の実家に帰ったらいいのにって毎年思っていました」
【26歳でプロポーズを断り、結婚したのは35歳。次ページに続きます】