歩み寄りの関係は愛情の量で成り立つ?
すぐに相手からの提案で同棲をスタートして、掃除についての意識を共有するところから始めた。相手は優子さんがゴミと思っていないものをちゃんと確認してくれたという。同棲して1年で2人は入籍に至る。
「同棲中に週に1回一緒に掃除をする日を決めて、共通でゴミと認識しているものは捨てるという意識を習慣化させることから始めました。今すぐ必要ではないけれど捨てられないものは家の近くのトランクルームに預けて、住まいを掃除しやすいようにシンプルにしようと言われて。トランクルームに預けたものも思い出が浅いものから何年経っても使っていなければ捨てると一緒にルールも決めました。夫もかなりのキレイ好きなんですが、母や元夫とは違い、1人ではなく一緒にやろうとしてくれる。この人となら私も掃除好きになれるんじゃないかなって思いました」
しかし、優子さんが1人でも掃除を習慣化できるまで、夫側には大きな負担が続く。仕事の繁忙期には掃除を別々に行うことが多くなり、掃除を毎日少しずつ行う夫と、決められたその日以外にまったくやらずに1人だと手を抜く優子さんの間で差が生じ始めてしまう。
「夫は休日出勤をしなければいけないぐらい忙しいときも目についたところを少しずつ掃除していました。でも、そこが私が掃除した場所だったら、キレイじゃなかったということか! と少しムカついてしまう。夫も汚れていてもその日以外掃除しない私にイラッとしていたんだと思います。
そこからコロナに入り、夫は完全なリモートワークになったためにリモート部屋を1つ作ったのですが、それから2人が過ごす部屋がバラバラになり、私の部屋がまた汚部屋になってしまいました。家庭内別居まではいかないけれど、夫はリモート部屋に布団を持ち込んでそこで寝るようになり……。また、離婚されてしまうかもしれないと怯えつつも、夫が来ないなら私の寝室は掃除する必要がないと思ってしまう。価値観って変えられないんですかね」
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物に執着がない人もいれば、物の思い出に執着していたり、未来に使うかもしれないと捨てられない人もいる。捨てることもそのまま保管しておくことも、それぞれの価値観に基づいての行動となっている。今回は掃除や物に対する価値観の違いから夫婦生活が傾き始めたが、価値観が違うと夫婦や恋人はうまくいかないのかと言われると一概にそうとは言い切れない。夫婦で共有するべきは大切にしている価値観ではなく、絶対にここだけは譲れないという価値観のほう。そこが受け入れられなければどちらかに我慢が生じ、関係はうまくいかなくなる場合が多いのだ。話を聞く限り、再婚相手は優子さんの価値観を聞き入れることはしたが、自分の価値観をうまく伝えられておらず、我慢することが増えてしまったのかもしれない。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。