取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

昌枝さん(仮名・57歳)は、介護施設でパート勤務をしている。その施設で親しくなり、お互いの家を行き来するまで仲良くなった美沙さん(60歳)からの勧誘に悩んでいる。

離婚するほど元気がないので、家庭内別居

昌枝さんは半年前に、30年間連れ添った夫と家庭内別居を決めた。

「よくあるモラハラとかDVとかそういうことではありません。息子が結婚して家を出て行き、夫と2人きりになって、もう誰かのご飯を気にする生活をやめたくなったんです。だって30年間、家族の食べ物のことばかり考えていましたから。友達と話していても、“あ、そろそろ夕飯をつくる時間だ”とか、本当は働きたいのに、家族の食事の準備があるから、早く帰るとか……。自分のために時間を使い、これからの人生を生きたくなったんです」

熟年離婚ではなく、別居にしたのは、夫に頼み込まれたから。

「離婚をしようと、主人に相談したら“それだけはやめてほしい”と言ってきた。私も離婚して一人暮らしをする覚悟はあったんですが、主人が“君がそばにいなければ、俺は死んでしまう”と泣いたんです。その後もさんざん話し合い、主人が“家庭内別居はどうか”と提案してきました」

夫は2階で生活し、昌枝さんは1階で暮らす。お互いに最低限のコミュニケーションしかとらず、干渉は一切しない。

「それでもなし崩しにされたらイヤだと思い、弁護士に依頼して、家庭内別居を始めた時点の財産を整理して2等分したんです。自宅はローンが終わっており、主人が固定資産税を払い、その他の光熱費は2等分することにしました。それでパートに出ることにしました。今、生活がだいぶ落ち着いて思うのですが、離婚するほど元気がなかったから、家庭内別居にしたのかな……とは思っています」

パートは楽しかった。誰かのためになっている実感があり、給料も悪くなかった。

「仕事はデイケアセンターです。扶養控除を気にせず働いており、ご飯は自分のぶんだけ作ればいいからフルタイム出勤をしています。だから月20万円以上は稼げるんですよ。家の家賃はかからないし、仕事をすれば利用者さんにも社員さんにも感謝される。私にピッタリな仕事だと思いました」

そこで問題の美沙さんと出会う。

「60歳なのに50代前半に見えるくらい若々しいんです。お尻なんてプリっとしているから、男性の利用者さんがよく触る。それでも“いいのよ~。私のお尻を触って若返ってね”なんて冗談を飛ばしている。本部の人からは“セクハラの容認になりますのでやめてください”と忠告を受けても気にしないんです」

【白いボトルから「疲れに効く」サプリメントをくれた……次のページに続きます】

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