取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

昌枝さん(仮名・57歳)は、半年ほど前に弁護士を立てて、家庭内別居に踏み切った。生活費と老後資金を稼ぐために、介護施設でパート勤務をしている。その施設で親しくなり、お互いの家を行き来するまで仲良くなった美沙さん(60歳)からの勧誘に悩んでいる。

【これまでの経緯は前編で】

有名タレントと親しげなツーショット写真

職場の太陽的な存在の美沙さんから渡されたタブレット。これをためらわずに飲んだことから認められたのだろうか。それからも顔を合わせるたびに、「疲れに効く」と渡された。

「美沙さんは週3勤務で、私は週5。勤務が長い私のために待っていてくれることもあった。それで私が家庭内別居をしていることを誰かから聞いたらしく“うらやましい”“話しを聞かせてほしい”などと言ってくる。そう言われると悪い気はしないじゃないですか。家庭内別居のことは、他の人には詳しく言っていないのですが、美沙さんは特別。美沙さんは話を聞くのが上手で、何もかも話してしまったんです」

その中には、弁護士を立てて相応の財産分与も得たことも話した。

「どんなふうに生活しているのかを見たいと、ウチに遊びに来たこともあります。ウチは1階の廊下沿いにトイレ、風呂、キッチンがある昔ながらの間取り。これが家庭内別居にぴったりだったんです。リビングから先は私のスペース。2階が主人のスペースで、お互いに鍵付きのドアに替えてシェアハウス状態で生活しています。それに美沙さんは驚いていました」

美沙さんの家にも行った。地元にできて話題になったタワーマンションだった。

「広くて眺めがよくてびっくりしました。美沙さんはご主人と再婚して2年。“別れたい”と言っていましたが、あまり踏み込んではエチケット違反だと思って、質問しませんでした。あと輝いている美沙さんの不幸な面は見たくなかった。でもこんな素敵な家に住む人なんだと尊敬の念は高まりました」

その後、穏やかな関係が1か月ほど続いたある日、「これ、飲んでみるといいよ」とサプリメントのセットを渡された。

「ホントは5万円なんだけれど、特別価格の半額2万5000円でいいと言われたんです。断ったのですが、何度も“いいよ~”と言ってくる。根負けして購入したら、“どうだった?”と何度も感想を聞かれました」

その後も、職場でサプリメントの効果を何度も吹聴された。ノーベル賞を受賞した高名な科学者も飲んでいる、メジャーリーグで活躍したスポーツ選手も飲んでいるなどと言われて、美沙さんと有名タレントとの親しげなツーショット写真も見せてもらった。それは紙焼きの写真で小型のアルバムに10枚以上収められていた。

「“今飲まないと、老後の体がボロボロになる”と言われました。そして、老後資金はお金だけでなく健康こそが大切だと何度も説得をされたんです。言われ続けるとそう思ってしまう。何よりも、このサプリを飲み続けている美沙さんが健康で若々しいことがいい」

【初期はバラ売りが出来ず、20セットで100万円……次のページに続きます】

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