いつでもどこでも仕事・家族・友人からの連絡が入るようになり、スマホを通して日々の様々な情報を際限なく入手できるようになった今、利便性を感じる一方で、情報量の多さに頭がいっぱいになって心に余裕を無くしている人もいるのではないでしょうか? まじめで一生懸命な人ほどやらなければならないことや情報に振り回されてしまい、本当の自分を見失ってしまうことも。

そこで、「思考の整理家」として「人や企業の思考をシンプルにし、持っている可能性を最大限に引き出す」活動を続けている鈴木進介さんの著書『『頭の“よはく”のつくり方』から、頭の中に余裕を生み出し、本当に大切なことに向き合えるようになるコツをご紹介します。

文/鈴木進介

「完璧を目指すより、まずは終わらせろ」

数年前に「完璧を目指すより、まずは終わらせろ」というFacebook創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏の言葉がTwitter上で拡散されていたことがありました。

スピードが企業の生命線であるIT系の経営者らしい言葉だと思います。確かにスマホのアプリなどは、完全な状態でなくてもまずはリリースしてみて、あとでユーザーの反応を見ながら修正し、アップデートを重ねていくスタイルが普通になっています。

ところが、非IT系クライアントからは異論が出ていました。「それは、しょせんIT企業だからでしょ?」と。

ただ、IT系の仕事でなくともこの考え方は一理あります。だって、私たちが行う仕事のすべてが、今この瞬間に「完璧」を求められるものばかりではないからです。

たとえば、マニュアルづくりはどうでしょうか? はじめから完璧なマニュアルなど、なかなか完成しませんよね。状況に応じて随時アップデートしながら精度を上げていったほうがよいはずです。

提案書の作成はどうでしょうか? 時間をかけてじっくりと練る場合も多いのですが、仮に顧客がラフ案でいいから概略だけを至急知りたいとなれば、骨子だけでいいかもしれません。完成したものが必要な場合でも、自分で作成するのは6割程度にとどめ、残りの4割はほかの人からフィードバック(建設的なアドバイス)をもらって完成させたほうがスピーディーに精度が高い仕事ができることもあります。

このように、すべてはケースバイケースなのです。今この瞬間に完璧が求められない仕事にも100%を求めていると、スピードや成果の点で劣ってしまうリスクがあります。

出典:『頭の”よはく”のつくり方』

心配事の9割は実際には起きない

ところが、すべてのことに100%になるまで動けない場合があります。もし失敗したらどうしようという不安で頭がいっぱいになっているケースです。

「失敗」することを不安に思う気持ちはわかりますが、まだ起きていない未来について考えすぎてしまうと、行動し始めた時点ですでに余裕がなくなってしまい、ますます失敗する確率が上がってしまいます。

ペンシルバニア大学のトーマス・ボルコヴェック氏らは「心配事の79%は実際には起こらず、16%の出来事は事前に準備を起こしていれば対応可能」という研究結果を残しています。つまり、心配事が現実化する確率はたったの5%というわけです。しかもこの5%とは、たとえば地震が起きて出荷が止まってしまったなど、自分ではコントロールできないことがほとんどだと言うのです。

それならば、過剰に心配して計画や準備にこだわりすぎるよりも、最低限だけ準備し、修正しながら精度を上げていくアップデートの考え方も取り入れてみてはいかがでしょうか。

余裕がある人はメリハリをつけることを意識する

失敗を恐れて完璧にこだわりすぎず、たとえば4割くらいのよはくを残して6割からのスタートを時にはしてみませんか? よはくの4割部分は思いきってほかの人に任せる、もしくはほかの人から知恵を借りることにして、アドバイスをもらってから行うことにするという方法もあります。

これ以外にも、今日中の100%にこだわらず日にちを振り分けて焦らず着実にこなすなど、よはくを残すことで逆に仕事の成果を上げやすくなる場合もあるのです。

タスクごとに力のかけどころを自分なりの目安として持っておくとよいでしょう。
たとえば私の場合、常に完璧を目指して万全の体制を整えることは、「(契約書など)ルールが明確なこと」「急を要することで相手がいること」「お金が絡むこと」という3つを基準に判断します。

一方、よはくを残してスタートを切ることは、「考えること」「調べること」「教えること」の3つを基準に判断します。これらは、どこまでいっても完成といったものがなく、まずはスタートし、修正や他人の知恵・最新情報を織り込みながらアップデートしていきます。

出典:『頭の”よはく”のつくり方』

このように、自分なりの目安を持っておくことで、やみくもに100%主義に陥って行動できなくなることを防ぎます。いつも全力を尽くすことは素晴らしいのですが、ときには肩の力を抜き、こだわりを捨てて6割主義を心がけてみるのもおすすめです。

余裕がある人とは、完璧さと6割主義のメリハリを上手につけている人のことなのかもしれません。

* * *

『頭の”よはく”のつくり方』(鈴木進介・著)
日本実業出版社

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鈴木進介(すずき・しんすけ)
思考の整理家®。1974年生まれ。株式会社コンパス代表取締役。現在は「思考の整理術」を使った独自の手法で人材育成トレーナーおよびコンサルタントとして活動中。大学卒業後、IT系企業や商社を経て25歳で起業。「金なし・人脈なし・ノウハウなし」の3重苦からスタートしたため、3年以上まともに給料が取れずに挫折続きの生活を送る。その後、思考を整理すれば問題の9割が解決していることに気づき、「思考の整理術」に開眼。以来、10年以上にわたり研究を重ねて体系化。難しい問題を優しく解きほぐす「思考の整理術」は、フリーランスや起業家、上場企業まで幅広く支持され、コンサルティング実績は100社以上、研修や講演は年間150日以上登壇、セミナー受講者数は累計3万人を超す。

 

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