娘が孫を連れて帰省。新たなイライラの発生源となってしまう

そんな生活がしばらく続いた3月初旬のある日、娘・さくらさんが孫を連れて帰省した。
娘夫婦は都内で隣接する区に住んでいたのだが、娘婿が4月から転勤することになり、引っ越し先の準備が整うまでの間、実家に居候させてほしい、とやってきたのだった。

折しも新型コロナウィルスの問題が一気に深刻化していた時期、リモートワークの準備に加え、引っ越し準備や手続き等が重なり、片時も気を緩められない状況だったに違いない。保育園に通える距離の実家は、さくらさんにとっても都合がよく、唯一気が休まる場所だったのだろう。

「せっかく家庭内別居の体裁を整えたのに、また元に戻ってしまいました。娘と孫のために部屋を空けたので、夫はまた私と同室で寝るようになり、食事もダイニングでとるようになって……。娘のせいで計画は台無しです(笑)」

一方、嘱託仕事に身が入らず、ヒマを持て余していた仁さんは、久しぶりに孫と会い、大喜びだったそうだ。孫の世話を買って出るが、案の定、何をやってもうまくできず、新たなイライラの発生源となってしまった。

「『お風呂に入れてやる』と言っても、本当に“入れる”だけ。『おーい、連れてこい』とか、『着替えはどこだ?』とか、お風呂場で叫んでいるだけなんです。おまけに、『俺のタオルはどこにいった?』なんてことがしょっちゅうで、かえって面倒。ちょっと目を離した隙に孫にビールを飲ませようとしたりして、子供がふたりいるようなものなんです」

次第に娘のさくらさんも不安になり、「お父さん、危ないから勝手なことしないで!」ときつく叱ることもあったそうだ。

「おむつ交換でも寝かしつけでも途中で対処できなくなって、『おーい!』とバトンタッチ。そりゃそうですよね。自分の子供の世話もしたことがないのに、孫の面倒だけ急にみられるわけがないんです」

まったく頼りにならない仁おじいちゃんだが、ある出来事をきっかけに、人が変わったようになった。
娘の離婚、である。

~その2~に続きます。】

取材・文/大津恭子
出版社勤務を経て、フリーエディター&ライターに。健康・医療に関する記事をメインに、ライフスタイルに関する企画の編集・執筆を多く手がける。著書『オランダ式簡素で豊かな生活の極意』ほか。

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