土地建物などの不動産を相続する場合、名義変更(相続登記)をした後の取扱いについて、長期的な目線で所有するかどうか検討しなければなりません。なぜなら不動産は、「ただ所有するだけでは税や維持管理コストのせいで赤字化してしまう」という性質を持つからです。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人の税理士中川義敬が、長年にわたる不動産コンサルティングを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、売却時の課税の仕組みや確定申告の手順にについて解説します。

目次
不動産を売却したら確定申告は必要か
不動産売却の確定申告に必要な書類とは?
不動産売却に関する確定申告の手順
まとめ

不動産を売却したら確定申告は必要か

不動産を売却したら、どんな時でも確定申告の提出が必要になるのでしょうか。確定申告の提出の有無について見ていきましょう。

提出が必要な場合

土地や建物を売却した場合に、売却利益が発生したら確定申告が必要です。売却で得た利益を譲渡所得といいます。譲渡所得の課税対象には、土地のほかに借地権や耕作権など、土地の上に存する権利を含み、海外に所在する土地や建物も対象になります。譲渡所得に対する税金は、他の所得と分離して課税され、売却した土地や建物の所有期間が、売却した年の1月1日現在で5年を超えるかどうかによって、適用される税率が異なります。

・所有期間5年以下の場合

短期譲渡所得:税率は所得税30% + 住民税9%

・所有期間5年超の場合

長期譲渡所得:税率は所得税15% + 住民税5%

そのほか、居住していた不動産の売却の場合には、所有期間が10年を超えていれば所得税10% + 住民税5%の税率が適用されます。

提出が不必要な場合

上記譲渡所得の計算において、損失が出た場合(特別控除を控除する前)は、確定申告をする必要はありません。しかし、居住用不動産の売却損が発生した場合は、一定の要件でその損失とほかの所得を通算できるため、確定申告の要否を検討する必要があります。

譲渡所得の計算方法

土地・建物を譲渡した場合の計算式は次の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用)

取得費とは土地・建物購入の際にかかった費用で、下記の内容も含みます。

  • 測量費
  • 造成費用(埋立て・土盛り・地ならしなど)
  • 借主に立ち退いてもらうために支払った費用
  • 所有権確保のために必要になった訴訟費用
  • 各種税金(登録免許税・不動産取得税・特別土地保有税・印紙税)
  • 土地購入代金・取り壊し費用(※当初から土地利用が目的であったと認められる場合)
  • 土地購入のための借入資金の利子(実際に使用開始する日までの期間に対応する部分)
  • 他物件取得のために購入契約を解除したときの違約金

譲渡費用とは、売却するために直接かかった下記の費用です。

  • 売買仲介業者に支払った手数料
  • 印紙税のうち売り主が負担したもの
  • 賃貸物件を売るために賃借人に支払った立退料
  • 売却目的で建物を取り壊したときの費用・損失額
  • より高く売るために締結済みの売買契約を解除したときの違約金
  • 借地権売却時に地主の承諾の対価として支払った費用(名義書換料など)

相続人や被相続人が居住していた不動産を売却する場合は、さらに3,000万円の特別控除が認められます。

不動産売却の確定申告に必要な書類とは?

土地や建物を売却した際、次の書類を確定申告によって税務署に提出することになります。

・確定申告書第一表、第三表

第一表では分離課税以外の所得を計算し、土地や建物の譲渡所得は第三表を用いて給与所得や事業所得などの総合所得と分離して税額を計算します。

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

譲渡所得の内訳書には、土地や建物の売却によって得られた収入や取得費、譲渡費用を記載し、これらの収入金額、所得金額などを前述の第三表に転記します。

・売買契約書、土地や建物の登記事項証明書

譲渡所得を計算するため、売却収入と取得費の金額を証明するためのエビデンスとして売買契約書が必須です。また、売却によって名義が変更されたことなどを証明するために登記事項証明書も必要となります。

不動産売却に関する確定申告の手順

確定申告に必要な資料が集まったら、実際に申告書を提出して納税手続きをする必要があります。

申告書の提出

確定申告は、土地建物の売却があった日の属する年の翌年3月15日までに行わなければなりません(確定申告書の提出は2月16日から可能です)。

国税庁のウェブサイトで作成した確定申告書は、『e-Tax』によって電子申告することが可能です。ただし、このときマイナンバーカードやカードリーダーが必要となります。マイナンバーカードやカードリーダーを持っておらず、電子申告することが出来ない場合は、確定申告書を所轄の税務署に直接提出するか、郵送することも可能です。郵送する場合には、簡易書留などの「信書便物」として送付する必要があります。「信書便物」として郵送した場合は、その日付印が提出日とみなされます。

税務署に直接提出する場合、または郵送する場合、いずれの場合も、納税地(住所地)の所轄の税務署がどこなのか必ず確認するようにしましょう。

納税手続き

確定申告書を提出したら、専用の納付書によって所得税を納税します。納税は、税務署の窓口か金融機関で行います。納付書による納税の場合、納期限は3月15日になります。

納付書による納付とは別の方法として、「振替納税」があります。これは事前に「振替納税」の依頼書を税務署に提出することによって、所定の銀行口座から所得税が引き落とされるというものです。この場合には4月20日前後に所得税が引き落とされます。

まとめ

土地や建物を売却するか保有するか迷っているときは、その重要な判断材料である「税金の問題」を先に税理士に相談するのが最適です。相続専門の税理士は不動産を診断できる業者との連携を深めており、相続人が負担する課税額の全体(相続税 + 所得税)を最適化しながら、土地活用の悩みについてもアドバイスすることが可能です。

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

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