できれば旬の食材を使った栄養豊富なごはんを食べたほうが健康にいいのは、ワンコも同じ。しかし、ワンコのごはん作りは大変だと感じる方が多いのではないでしょうか?
獣医師が考案した「長生き一汁一菜」は、スーパーで売っている食材で人間のごはんを作る際に、ワンコ用に料理を取り分け、調味料を入れなければ良いだけなので、普段の食事作りのついでに出来てしまいます。
家族の一員であるワンコの健康のために、「一汁一菜」を始めてみませんか?
文/林 美彩 監修/古山範子
「長生き 一汁一菜3カ条」
1.旬の食材をたっぷりとシンプルに!
年間を通して出回る野菜でも旬のものは栄養価が高く、食材が持つ「五性」も夏の野菜は体の熱を落ち着かせるもの、冬の野菜は体が温まるものなど、その季節の養生につながる特性を持っています。旬のものを取り入れつつ、そこに体質を併せて食材を選ぶことが我が子の養生になります。
2.味つけも調理もシンプルに
旬のものは香りも味も格別です。ワンコには食材の持ち味を生かして、おいしく味わってもらいましょう。調理も煮る、焼く、蒸すという簡単な工程ですが、これらが丁寧につくられることでビタミンLがたっぷり含まれた食事になります。
3.調理法も多彩に取り入れて
鎌倉時代に禅寺を中心として広 がった日本食事形式「一汁一菜」。 今回はその時代からの一汁一菜を参考にしているものの、これはまったく新しいワンコのための「長生き一汁一菜」です。同じ食材を使っても調理法によって嗜好 性が変わります。いろいろと工夫をし、我が子が喜んで食べてくれる食事を目指してください。
基本の作り方「一菜」編
ワンコのごはん作りは面倒くさい、と思っている方もいるかもしれませんが、 「炒める」「煮る」「蒸す」「オーブンで焼く」というくらいで、実はとても簡単です。
食材は細かく刻みましょう
野菜などは消化しづらいので、最低、これくらいは刻みましょう。フードプ ロセッサーでも結構です。春雨、うど ん、パスタなどの炭水化物も3〜4cmくらいに切り刻み、表示時間より長めにゆでて柔らかくしましょう。
基本の調理法
1.炒める
フライパンや鍋に、細かく刻んだ食材を入れて素早くかき混ぜます。基本的に、炒めるときは少量のオリーブオイルなどをひいてから、食材を入れます。火が通るまでの時間はそれほどかかりません。
2.煮る
水やだし汁の中に入れて加熱します。食材に火が通ったら、食べられる状態。
3.蒸す
蒸気の中に食材を入れて、間接的に火を通す調理法。とはいえ、蒸し器などは使いません。鍋に水を入れ、その蒸気で食材を加熱します。栄養素の流出が少ないのが特徴です。
4.オーブン
対流熱を利用して温度を高めて食材にじっくり熱を加えていきます。オーブンは時間をかけて食材の中まで火を通していきます。中心まで熱が通りにくいブロック肉やグラタンなどを焼くときに適した調理法。
基本の作り方「一汁」編
毎日汁ものを作るとなると、欠かせないのは「だし」の存在。手間をかけず、汁ものをおいしくする工夫をご紹介します。
かつおだし汁
材料
・かつお節…30g ・水…1L
作り方
水を沸騰させたら、かつお節を入れ、鍋底に沈むまで1〜2分おく。
昆布だし汁
材料
・昆布…10g ・水…1L
作り方
鍋に水と分量の昆布を入れ、昆布のうまみを スムーズに引き出すため火にかける前に30分ほどつけておく。鍋を中火より少し弱いくらいの火にかけ、10分くらいゆっくり沸騰直前まで加熱する。
煮干しだし汁
材料
・煮干し…30g ・水…1L
作り方
水と煮干しを鍋に入れ、中火強にかけます。沸騰したら弱火にし、アクを取りながら、さらに4分ほど煮出して、十分にうまみを引き出します。
*水出しにするなら
水2カップに煮干し4~5匹 ほど入れ、1日冷蔵庫に入れ ておく。水出し法はあっさりとしただしが取れるため、ワンコの料理に適しています。また、煮干しを水につけおくだけなので、だし汁を作り置きしたい人や、忙しくて時間のない人におすすめ。
ワンコへの与え方
1.1匹のワンコに対し、 一汁用と一菜用の器(ボウル)を用意して
器は一汁用(深めのボウル)と一菜用が必要です。 ひとつでも構いませんが、そのつど、器を洗ったり、拭くのが面倒ならば、もうひとつ用意したほうが良いでしょう。
2.先に「 一菜」! 次に「 一汁」を
一菜を与え、そのあと一汁を与えるのが基本です。
一汁から与えると、胃液が薄まる可能性があります。
3.「人肌」に冷ましてから与えましょう
一汁一菜は基本、 できたてのものは熱すぎるのでご注意を! その昔、獲ったばかりのワンコの獲物はまだ温かかったので、本能的に温かな食べ物を好みがちですが、 調理したてのものは熱すぎるので、食事の温度は、35〜38°Cくらいが基本 です。
4.一菜はしっかり混ぜてから与えましょう
与える前には、一菜の具材とご飯を混ぜましょう。またはご飯は一汁に混ぜても構いません。本書ではきれいに盛っていますが、ワンコは見 た目を気にしません。しっかり混ぜて好き嫌いなく食べてもらうことが大切です。また、魚の骨はきれいに取ってから与えましょう。
5.残した場合は、嗜好性の高いものをトッピング
時に好きじゃない食材が入っていると残したり、遊んだりするワンコもいます。ワンコが好きな食材(かつお節、青のり、ご ま、納豆、桜えびなど)をトッピングしてあげてみて、それでも食べない場合は下げてしまいましょう。2〜3日続く場合は栄養が不足していますので、フードとの併用も検討しましょう。
* * *
『一汁一菜長生き犬ごはん』 林 美彩 著 古山範子 監修
(世界文化社)
著者 林 美彩(はやし・みさえ) 獣医師
毎日の食べるもので体は作られているという両親の教えのもと、学生時代に飼っていた愛犬を迎えたことをきっかけに、手作り食を学ぶ。大学卒業後は、西洋医学・代替療法の両方の動物病院の勤務、サプリメント会社での相談対応に従事。西洋医学と代替療法の良いところを融合させた治療、病気にならない体作り、家庭でできるケアを広めるため、2018年3月に「chicoどうぶつ診療所」を開院。現在、全国より数々の相談を受けている。獣医保健ソーシャルワーク協会所属。
監修 古山範子(ふるやま・のりこ) 獣医師
麻生大学獣医学科卒業。愛猫4匹と暮らし、手作り食を中心に愛猫の養生法を提案する、犬猫養生Harmonyを主催。中山動物病院非常勤講師。日本獣医ホメオパシー学会認定獣医師。日本ペット栄養学会会員。国際薬膳師。獣医保険ソーシャルワーク協会所属。