相続対策を検討する場合、不動産の取扱いをどのようにするのか、ご自身で不動産を購入したり、相続や贈与によって譲り受けたり、取得する方法は様々です。しかし不動産を手に入れた場合には不動産取得税が課税されます。このコストも想定したうえで不動産を取得しなければいけませんが、実際どれだけ支払いが発生するのでしょうか?
そこで今回は、日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、長年にわたる相続税申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、不動産取得税の計算方法や軽減措置についてご説明します。
目次
不動産取得税とは?
不動産取得税の計算方法
不動産取得税の軽減措置とは?
どうすれば軽減措置を受けられる?
まとめ
不動産取得税とは?
不動産取得税は、下記それぞれの方法によって不動産を取得したときに、取得した人に対して課税される税金です。ご自身で購入しても、贈与のように無償で譲り受けたものも、また登記がされていない物件であったとしても、課税されることになります。
・土地や家屋を購入した場合
・贈与を受けた場合
・家屋の建築をした場合
贈与を受けた場合に、ご夫婦間の居住用不動産の贈与の特例や、相続時精算課税制度の適用を受けた場合でも、不動産取得税の課税の対象となるので注意が必要です。そして、これらの贈与を取り消した場合でも課税は免れません。また、等価交換(※)によって不動産を取得した場合でも課税の対象となるため、不動産取得税は様々な取得方法で課税されることになります。
(※)等価交換… 同じ種類の土地もしくは建物を、同等の価値で交換する場合に、不動産の譲渡がなかったものとみなされる特例。
不動産取得税が課税されない場合
不動産を取得すると基本的には不動産取得税が課税されます。しかし、相続によって取得した場合等、一定の場合には課税されません。ご自身で不動産を買うことや、贈与によって受け取る場合は、本人の意思で不動産を取得したことになります。しかし、相続は自分の意思で不動産を取得するわけではありません。相続が発生することで、ある意味、強制的に法定相続人になり、不動産を相続(取得)することになるからです。
よって、不動産取得税は課税されないのです。また、課税標準となるべき額が次の金額未満の場合にも、不動産取得税は課税されません。
・土地… 10万円
・家屋の新築、増築、改築… 23万円
・その他(売買など)… 12万円
不動産取得税の計算方法
それでは、不動産取得税の具体的な計算方法をご紹介します。
具体的な計算式
取得した不動産の価格(課税標準額)× 税率
取得した不動産の価格には特例があり、令和6年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合は、この土地の課税標準額は価格の2分の1になります。
また、土地と家屋に応じて税率が設定されています。
平成20年4月1日から令和6年3月31日までに取得をする
・土地、家屋(住宅)… 3%
・家屋(非住宅)… 4%
不動産を取得した日から30日以内(※)に、その不動産の所在地を所管する都道府県庁へ申告する必要があります。(※)東京都の場合は30日以内。他府県の場合には20~60日以内。
取得した不動産の価格
上記の計算式のうち、不動産の価格とはいったい何の金額を指しているのでしょうか。この不動産の価格とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準により評価、決定された価格のことをいいます。具体的には新築や増築家屋等を除いて、固定資産課税台帳に登録されている価格のことを指します。不動産の購入価格や建築工事費ではありませんので、ご自身で支払額を計算する場合には、注意が必要です。
上述した通り、贈与や交換で取得した場合でも不動産取得税は課税されることになります。しかし、この場合でも不動産の価格になるのは、固定資産課税台帳に登録されている価格を用いて計算することになります。
不動産取得税の軽減措置とは?
不動産取得税には、一定の要件を満たすことで軽減措置が用意されています。
新築住宅を取得したとき
以下の床面積要件を満たす新築住宅は、住宅の価格から一定額が控除されます。
【控除額】
1,200万円(認定長期優良住宅の場合は1,300万円)
居住用の中古住宅を取得したときに(耐震基準に適合する中古住宅)
次の(1)から(3)の要件をすべて満たす中古住宅を取得した場合は、住宅の価格から一定額が控除されます。
(1)居住要件… 個人が自己の居住用に取得した住宅であること。
(2)床面積要件… 50平方メートル以上、240平方メートル以下。
(3)耐震基準要件… (Ⅰ)、(Ⅱ)のいずれかの要件を満たす場合。
(Ⅰ)昭和57年1月1日以降に新築されたものであること。
(Ⅱ)昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、建築士等が行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることの証明がされたもの。
【控除額】
住宅の新築された日に応じて100万円から1,200万円が、住宅の価格から控除されます。
【減税額】
次のいずれか高い方の額が土地の税額から減額されます。
・45,000円
・土地1平方メートル当たりの価格×住宅の床面積の2倍 × 住宅の取得持分(※) × 3%
土地1平方メートル当たりの価格に関して、宅地や宅地比準土地の場合は、固定資産評価額に2分の1を乗じた後の価格とします。
(※)1戸当たり200平方メートルを限度。
どうすれば軽減措置を受けられる?
取得した日から30日以内(※)に、土地、家屋の所在地を所管する都税事務所(都税支所)・支庁に一定の書類を添付して、申告することで適用を受けることができます。
(※)東京都の場合30日以内で他府県の場合には20~60日以内。
まとめ
相続の生前対策のために、賃貸不動産を購入することや、贈与により不動産を譲ることはよく用いられる方法です。しかし、節税目的で行ったことでも不動産取得税が課税されることによって思わぬ支出が発生します。効果的な生前対策を行うためにも、どの程度の不動産取得税が発生するのか、シミュレーションをしておくことも重要でしょう。
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)