新婚旅行での苦い思い出。それ以来一緒に旅行していない

「どうしてあの人が沖縄に行きたいのか、わかります? 簡単な理由なんですよ。釣りがしたいだけ。釣りが趣味で、社内旅行もわざわざ夜中から出かけて、翌朝近くの釣り場で釣りをしてから旅館で合流するような人なんですよ。沖縄旅行だって、絶対に釣り竿持参に決まってますよ」(さとみさん)

話は新婚旅行にまで遡った。

飛行機が苦手なさとみさんに配慮し、電車で金沢へ新婚旅行に行った倉田夫妻。さとみさんは、夫が早朝から海釣りに出かけてしまったため、ひとり淋しく朝食をとったそうだ。チェックアウトの時間になっても戻らない夫を心配していると、旅館の女将が伝言メモを手渡しに来た。

「小さな紙に『予定変更。15時金沢駅』と書いてありました。女将さんは困った顔をしながら笑ってくれましたけど、あのとき、この人と結婚して本当によかったんだろうか……と思って泣きたくなりました」(さとみさん)

「夫との旅行はこりごり!」と決定づけた出来事もあった。長男がまだ幼い頃の家族旅行だ。

「珍しく、主人が伊豆の温泉旅館を予約したんです。案の定、翌朝は『チェックアウト頼むな』と言って釣りに出かけてしまって……。それって、家族旅行の意味がありますか? 私はひとりで息子を連れて、午前中に植物園で過ごして、ふたりでランチして。あんまり頭にきたから、主人に何も言わずに、先に帰ったんです。その夜、泣きながら大喧嘩した記憶があるんですけど、忘れちゃったんですかね? あれ以来、20年くらい一緒に旅行をしていないんです」

どうやら洋二さんは、かなりマイペースなようだ。

~その2~に続きます。】

取材・文/大津恭子
出版社勤務を経て、フリーエディター&ライターに。健康・医療に関する記事をメインに、ライフスタイルに関する企画の編集・執筆を多く手がける。著書『オランダ式簡素で豊かな生活の極意』ほか。

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