「引きこもり」が社会問題として認識されたのは、1990年代後半とされています。若年層を対象としたイメージがつきまといますが、必ずしも若者だけの問題ではありません。解決されないまま長期化、高齢化が進み、80代の親が50代の子どもの暮らしを経済的に支える家庭状況、およびその状態から「8050問題」と呼ばれるようになりました。

この問題を受けて関西クリーンサービス(https://www.k-clean.jp/)が、「引きこもり」に関する意識調査を実施しましたのでご紹介いたします。望まぬ孤独に苦しみ、最悪の場合は孤独死という結末にいたってしまう事案もある中、解決への糸口はどこにあるのでしょうか。

大人の引きこもり 「8050問題」とは

 内閣府の実施した「生活状況に関する調査(平成30年度)」から、40歳から64歳までの引きこもりは、全国に約61万人いるとの推測ができます。

平成30年度 内閣府「生活状況に関する調査」より『日本のひきもりの者の推計数』
平成30年度 内閣府「生活状況に関する調査」より

このような中高年の引きこもりは、家庭における収入の柱が80代の高齢者であるため、経済的に逼迫しやすい点が問題として挙げられます。また、親に介護が必要になった場合や、親が先に死去した場合、社会から隔絶された一家が悲惨な状況に陥ってしまう恐れがあります。

引きこもり状態にあることに悩み、苦しんでいるのは、当事者だけではなく、その家族も同じなのです。

「8050問題」の実態

30代~80代の全国の男女を対象とした調査において、「家族もしくは親族に引きこもりの方がいる」と答えた方は全体の6.3%でした。以下がその年齢分布です。

引きこもりの方の年齢分布

この結果からは、30.1%と最も高い割合を占めたのは50歳以上の方であり、40歳以上では全体の約61%と、引きこもりの高齢化が顕著に表れています。

さらに、「家族もしくは親族に40代以上の引きこもりがいる方」を対象に調査を進めると、多くは10年以上もの間、引きこもり生活を続けていることがわかりました。

引きこもりの期間分布

期間が長くなるほどその割合は高く、調査結果は、まさに「8050問題」において問題視される状況を裏付けるものでした。

引きこもりの原因1位は「人間関係が上手くいかなかった」

では、引きこもりはどういった原因から生まれるのでしょうか?

引きこもりのきっかけになった理由

回答として目立つのは「人間関係が上手くいかなかった」「職場になじめなかった」という特定のコミュニティへ上手く所属できなかったという理由です。これらと「病気」から始まる引きこもりが多いとの調査結果になりました。外からは見えにくい障害、または心の病気を抱えていることも多く、社会や周囲からの理解が得にくいという原因が考えられます。

引きこもりが始まる原因は日常の中に当然のように転がっており、また、引きこもりになる人は他者とのコミュニケーションになんらかの不安を感じていることが強くうかがえます。

助けてほしいと言えない家族

このような引きこもりは、家族の支えや外部の専門的な支援がなければ、抜け出すことは容易ではありません。家族や親族の引きこもり問題の支援を、外部に頼んだ経験があるかどうかに関する調査結果が、次のものです。

自治体や支援団体に支援を頼んだ経験

驚くことに、70%以上の人がそもそも相談に行っていないのです。その理由としては「相談先がわからなかった」「解決につながる支援が見つからなかった」という回答が50%以上となっていました。

こうした中、引きこもりの家族が本当に必要としている支援とは、いったい何なのでしょうか。

引きこもり解決にむけて必要だと考える支援

引きこもりの解決に必要な支援としては、「金銭面の支援」が50%以上、「当人の気持ちや立ち直りの支援」が45%以上となっています。

このアンケート調査では、引きこもりの高齢化・長期化の問題が浮き彫りとなり、外部を交えての支援が決して十分ではない実態が見えてきました。

引きこもりを抱えた家族の思い、伝えたいメッセージ

ここでは、アンケート調査から引きこもりを家族・親族に持つ方の声を紹介します。長期間、本人とともに悩み、励ましてきた家族の本音は痛切なものでした。

・必ずどこかに親身になって味方になってくれる人がいる。恥ずかしいという思いはわかるが、まずは相談なり何かしてほしい。誰とも接点が持てなければ状況は動かない。誰かと接点を持つことを繰り返せば、状況は変わってくる。(40代/男性)

・殻に閉じこもらず、意地を張らず、気楽に周りのものと接するようになってほしいし、その殻から自分なりに一歩出てほしい。(70代/男性)

・生きていれば何とかなる。自分自身の存在意義は必ずある。悲観ばかりせず前を向けば、小さくても必ず光が見えてくる。(40代/男性)

・時には立ち止まりながらでもよいので少しずつ、一歩と言わず半歩でも前に進んで欲しい。小さなことでもできたことを喜んで。(40代/女性)

・親としてはできるだけ刺激を与えず穏やかに暮らしていきたい。私たちの死後のことが心配なので、経済的な自立をしてほしい。(70代/女性)

・何を言ったら心に響くんでしょう。普通に話すことはできるのに。わかりません。(40代/女性)

***

今、苦しんでおられる方には、「引きこもりに対して恥じる気持ちを持つ必要はなく、悲惨な結末を避けるために、早期に周囲や行政に相談してほしい」と、伝え続けることが非常に重要なようです。

そして、ご自身の家族・親族に類似した状況が発生している場合は、早期に手を差し伸べるべく、頼れる機関への相談から始めてみてはいかがでしょうか。引きこもっている人物を自らの家庭で受け入れることには経済的負担も伴うため、決して簡単ではありません。しかし、社会から遠ざかっている期間が短ければ、就職先や新たな社会との関わりを見つけやすいのも事実です。悲惨な結末を避けるために、できる範囲での行動が望まれます。

調査概要:8050問題に関する調査
調査期間:2021年10月5日-2021年10月14日
調査方法:インターネット調査
モニター提供元:日本コンシューマーリサーチ
調査人数:654人(グラフ①1244人)
調査対象: 40代以上の引きこもりの方がいる30代~80代の全国の男女(本人含む)
(グラフ①30代~80代の全国の男女)

 

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