父親の威厳は外に威張ることで作られる?
高校生も1年の終わり頃には両親との仲も普通に戻り、家族3人で出掛ける機会が再び増えていったそう。しかし、その中で昔は気にならなかった父親のある行動が目につくようになっていきます。
「店員さんなどに対して、自分がお客側にまわったときに偉そうなんです。クレームなどを行うわけではないのですが、注文のときにメニュー名だけで頼んだり、催促のときも『まだ?』といった感じです。それに対して母親が『静かに待っとけばいいでしょう!』と怒るのですが、『客の当然の権利』とか言っていて……。親でなくても一緒に食事をしている友人の中でもこんな人がいたら少し気分が下がるなって。父は家では本当に優しい人なのに、なんでなんだろうってずっと思っていました」
外出時に覚えた父親への違和感は祖母に対しての態度でもあったとか。
「父は祖父には優しいのですが、祖母のことを煙たがったり、すごく偉そうなんですよ。私が小さい頃は私が気づいていなかっただけでずっと同じ態度だったのかもしれないけれど、怒鳴られる祖母を見るのが本当に辛かったです。祖母と2人でいるときにどのような態度だったのかは知りませんが、私たち家族がいるときにはいつも祖母に厳しくて、もしかしたら父親の威厳というものを外で偉そうにすることで見せていたのかなって」
そして、杏璃さんの現在の旦那さまを紹介するときにその威厳が最悪な形で露呈してしまいます。
「学生時代に付き合った男性はいましたが、私は一度も両親に紹介したことはありませんでした。それは恥ずかしかったという思いもあったり、兄が一度もそんなことをしていなかったので必要ないのかなと思って。
でも、結婚となればそうはいきませんよね。プロポーズを受けた後に私は結婚したい男性がいると言って両親に紹介しました。母親は終始ニコニコしていましたが、父親は……夫にマウントを取り続けました。夫があまりお酒が強くないことを知ると、『そんなんでサラリーマンをやっていけるのか』から始まり、自分がいかにお酒が飲めて接待などで重宝されていたかの武勇伝が始まって。それを夫の隣で聞いていた私はただただ恥ずかしかったです」
父親に何をされても杏璃さんは我慢を続けた結果……。
【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。