関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、時田牧子さん(仮名67歳)。介護施設でパートとして働く、憂いがある女性です。髪の毛を黒に染めており、体つきもほっそりしていて美しい。趣味はヨガでずっとベジタリアンな生活を続けているそうです。
夫の浮気を常に疑っていた
今回、私たちに依頼した背景は、結婚33年、4歳年上の夫(71歳)の行動が怪しいから。夫は先月、ある企業の役員を退職し、悠々自適の生活に入るつもりが、次男(30歳)が女性とトラブルを起こし、その後始末にお金がかかって老後資金が目減り。
「2000万円っていうのはあるんですけれど、減ると不安になると言いますか。まあ働けるうちに働こうと、夫も私も勤めに出ることにしたんです」
時田さんには3人の子供がおり、学費や養育費がかかった。
「ずっと独身でお勤めしていたお友達が一番お金があるというか。私は結婚して、3人の子供を育て上げて、世間的には良妻賢母とか言われていますけれど、本当の幸せって、ずっと独身だった彼女のような気がするんですよ」
そうしみじみと語ります。お金の問題だけでなく、牧子さんは夫の浮気に苦しめられていたという。
「まあ、人当たりが良く、社交上手だから女性がいくらでも寄ってくるんです。若い頃は“社用族”だったので、それはまあホントにいろんなママやらチーママやらと関係を持って、ずいぶん不安な思いになりました。相手はプロ。こっちは生活に疲れて3人の子育てに髪を振り乱しているオバさんでしょ。“夫が女のところに行ったら、この子たちはどうなるのかしら”といつも疑って、浮気するたびに10キロ、20キロと痩せちゃってね。今思えば、夫が好きなんじゃなくて、お金が必要だったのかもしれないけれど、若き日の私は、それがわからなかったのよ」
夫は会社で昇りつめ、60歳くらいまで女性の影があったという。
「ずっと私は夫の浮気を疑い、子供たちと私の生活のために、離婚をするときのための証拠を取っていたんです。もちろん探偵さんに頼んでいました。でも寄る年波ってやつで、夫もやっと“男性卒業”したと、最近10年間は穏やかに過ごしていたのですが、まさかここに来てこんな思いをさせられるとは」
夫は半年前から、目減りした老後資金の不安解消とヒマつぶしを兼ねて、ある団体の役員としてアルバイトを始めたそうです。電話番から書類の処理、果ては帳簿つけまで行っているという。
【70歳にしてオーデコロンをつけて出かけるようになった夫。次ページに続きます】