弟は母親、姉は父親、じゃあ私は?

美穂さんに反抗期はなく、中学生になっても母親と仲良くしたいと思っていたそう。しかしそのときには弟との仲は完全にこじれていて、弟からわざと母親を遠ざけようとされていたとか。

「弟とはお互いが完全に存在を無視していました。晩御飯のお皿を用意してくれないのは当たり前で、部活などで遅く帰ったときには母親が用意してくれていた晩御飯の残りがすべて弟に食べ切られていることも。すれ違ったときには舌打ちをされたり、肩などがぶつかったときには汚いものを触った後のように手で払われることもありました。

母親は私と弟がそんな感じになっているのにそれには関与せずで、食後にはいつも弟と一緒にゲームをしたり、テレビを見たりしていました。母親はたまに私に何かをお願いしてくることもあったんですが、弟がそれを率先してやってしまい、それを見て母親は弟だけをより構うようになる。弟さえいなければってずっと思っていました」

マイペースな姉はそんなことを気にしておらず、その姿を見て「私だけじゃない」と思えていたとか。しかし、姉とも違うことを思い知らされた出来事があったと振り返ります。

「姉はずっと父親と連絡を取っていたんです。姉が高校卒業後の進路の話になったときに専門学校に行きたいと言って母親に反対されたんですが、父親を味方につけて専門学校に進学しました。家では私と同じように母親に構われていない姉だったけど、父とはずっとつながっていた。私は父親が帰ってくるときにも妙な恥ずかしさがあってうまく甘えられないようになっていたのに……。勝手ですけど、裏切られた気分でした」

そして、父親という味方がいない美穂さんは進路を諦める結果になってしまいます。

「私も高校卒業後に行きたい専門学校があったんですが、母親から反対されて。しかも、『お姉ちゃんが勝手なことをしたから、ごめんだけど就職してくれない?』と。これ以上母親から嫌われたくない思いから笑顔でわかったと答えましたが、内心は悔しくて仕方ありませんでした」

家の居心地の悪さは続くも、完全に家族から外されたくない思いから実家を離れることができなかった。

~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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