女性が怒る顔が「生理的に苦手」
玄関には靴が堆積、廊下にはカビが生えたミカンも入っている箱やサラダオイルや醤油の瓶、数年前のお中元の箱が手つかずになっていた。リビングの床にはお菓子のカスやカセットテープが散らばっている。ソファの上には洗濯物の山。
「引っ越しの見積もりで、業者さんが来たことがあったんですが絶句していましたよね。60平米のアパートがモノとゴミだらけなんですから。もちろん、僕が片づけたことは多々ありました。最初は“掃除は女の仕事なんだから私がやる”と言っていたのですが、まったく妻が片付けられないので、私がやると、“あてつけがましくやらなくてもいい”とか、物を捨てようとすると“もったいない! あなたはいいお育ちだから、まだ使えるものまで捨てる”と、捨てさせてもらえない」
正治さんは都内でガソリンスタンドチェーンを営む裕福な家庭の次男坊。妻は地方から高卒で上京してきた苦労人。正治さんの両親のところに結婚の挨拶に行った際に、正治さんの母が「あら、昔なら身分違いの結婚ね」と言ったことをいつまでも覚えていた。
「母は悪気がないのですが、その発言の不適切は僕でもわかります。すぐに“僕が選んだ、ステキな人なんだ”と言ったのですが、妻はその“僕が選んだ”という一言が余計だったとずっと言うんです。僕は穏やかな家庭で育ったんです。姉も妹もいますが、みんな怒らない。そういうこともあるのか、怒った女性のことが生理的に受け付けられないんです。害獣や害虫、傷口などが“生理的に無理”っていうのと同じ感覚。だから、私が掃除をすると妻が怒るから避けるようになったんです。思えばそれが、終わりの始まりだったんですよね」
【妻に悪意はないので離婚は難航、しかし息子は味方をしてくれた~その2~に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。