文/印南敦史

さまざまな場面で、「50歳からどう生きるか」について議論が交わされるされることがある。50代になれば誰しも“その先”の未来が多少なりとも気にかかってくるのだから、当然といえば当然の話だ。

ただし50歳は、それまでの生き方の結果であり、「50歳からどう生きるか」という問題ではない。『心を満たす50歳からの生き方』(加藤諦三 著、大和書房)の著者は、そう主張している。

心理的に自立した状態で社会的に50歳を迎える人もいれば、なんらかの失敗やつまづきを経験し、さらに社会人として一人前になれないままで50歳になる人もいるわけだ。

人の運命はそれぞれ異なり、どのような運命であったとしても、それは外から与えられたものである。問題は、晩年に差しかかったとき、「そうか、これが自分の運命だったのか」とそれを受け入れられるか否か。

いうまでもなく、50代になって自覚的に自らの運命を受け入れられるなら、それは最高の人生だと定義することができるだろう。

たまたま生まれたのが地獄であれ、天国であれ、それがその人の人生である。それがその人の運命である。
その自分の人生に対して責任を負う決断ができるのが人生の勝者である。
そこに自分という存在がこの世に生まれてきた意味が生じる。
自分の運命を引き受ける決意をするとき、人間のあまりの不公平に多くの人は神を恨み苦しむ。しかし自分の運命を引き受けるときは、自分の人生の苦しみに意味が賦与されるときである。(本書「はしがき」より)

誰しも、自分のこれまでの人生については「こうだったらよかったのに」というように、なんらかの不満を感じているものかもしれない。だが、それらすべてを受け入れ、そんな人生を50代まで生き抜いてきた自分のエネルギーを称え信じること、戦い続けてきた自分の生きる姿勢を信じることが重要なのだ。

では、青年期にがんばってきたにもかかわらず、壮年期に人生が行き詰まる人は、はたしてどこが問題だったのだろうか?

そういう人には、周囲の期待を実現させるために、あるいは親の期待を実現させるためにがんばってきたタイプが多いと著者は指摘している。自分の“内なる願望”を実現させるためではなく、動機が欠乏した状態で、受け身の姿勢でがんばってきたということだ。

だが、ストレスに耐えながらがんばってエネルギーを消費していくと、やがて「自分はなにものか」という関心が薄れてくる。

場合によってはそのまま自分を見失い、ただ社会的成功を求めた結果として燃え尽き症候群になったり、不眠症になったり、なんらかの依存症になってしまうかもしれない。あるいは人間関係が崩壊したり、最終的に引きこもりになってしまうことだって考えられる。

それは、青年期の目的は外から与えられたものだったことに気づかないままがんばった結果だというのだ。

また、長きにわたって反動形成と防衛的価値観をよりどころにして生きてきた結果、自分で自分がわからなくなっている人もいるかもしれない。だから、内面から出てくる適切な目的が持てず、沸き立つような「やる気」も出てこないわけである。

弱さと不幸を受け入れさえすれば人は強くなれる。
少年少女期から青年期までの課題は、自分の運命を受け入れることである。その上で壮年期に入る。壮年期の課題は、その受け入れた「自分の運命」を愛することである。
人生最大の課題は、自分の運命を受け入れることである。そして、その現実を受け入れることである。
私は抑制型の人か? 非抑制型の人か? 自分の親はどんな人か? 自分が成長した人間環境は?
アドラーの言う人生への態度というのは、「自分の人生の課題をいかにかいけつするか?」ということであろう。(本書136ページより)

そういった壮年期の課題を解決したら、その先に待っているのは高齢期だ。高齢期の課題は、“内なる生産性”であると著者はいう。それが美しき老年であるとも。

つまり、自分の弱さを受け入れるからこそ、自分の本当の長所が見えてくるのである。不幸を受け入れるから、自分の本当の幸せが見えてくるのだ。

50代を過ぎ、体力面であれ精神面であれ、なんらかの壁に直面している方は少なくないのではないだろうか? そして、そこで迷いを感じているのであれば、本書を手に取ってみるべきかもしれない。

なぜならここには、50歳から成熟した人生を送るために、いや、年齢にかかわらず人としての成熟を目指すために必要なヒントが盛り込まれているからである。

それらをどう感じ取り、どう生かすかは自分次第だ。

『心を満たす50歳からの生き方』
加藤諦三 著
大和書房

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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