幼い女の子の父親は誰なのか
19時間近になると、2歳くらいの子供を連れた女性がアパートに入っていきます。外に漏れ聞こえてくる音声を解析すると、女性は夫の元部下。中学生と小学生は女性の前の夫との子供で、2歳くらいの女の子は、夫の娘である可能性が高い。
会話の中で、「8月●日に軽井沢に行く」と繰り返していました。
以上の内容を依頼者・律子さんに報告すると、「え??」と激しく驚いていました。
「軽井沢にしょっちゅう行っていたのはこの人達とだったんですね。ウチの子供たちとの楽しい記憶の場所を、こんな人と行っているなんて……」
と、悲しみの表情を浮かべていました。そして、「子供たちに相談します」と、お帰りになったのです。
しかしそれから3日後、再び「夫が離婚したいと言い出したんです」と連絡が入ったのです。
調査の後、律子さんは子供たちを招集し、「パパ、女性がいたのよ」と報告すると、2人の息子は女性がいることを知っていたそう。娘はこの日、来られなかったそうですが、娘は知らなかった模様。
「夫と上2人の息子たちは仲がいいんです。わが家の子育て当番は、平日が私。土日は夫で、土日に家を留守がちにしている間に、夫が幼い頃から息子たちを見ていたんです」
律子さんの外出理由は、チャリティ。動物保護の活動に心血を注いでいるとか。夫と律子さんは「誰かのために持てる力を使いたい」という共通点があったのです。
「息子たちは、“現状維持がいいと思うよ。ママは知っていて黙認しているのかと思った”と驚いていたんです」
夫を問いただしたところ、女性は夫の元部下で、新卒の頃に不倫関係にあったことがわかりました。その後、自然消滅し、女性も別の男性と結婚し、一男一女をもうけるも、結婚相手のアルコール依存症で離婚。この離婚をサポートしたのが夫だったようです。
「彼女は寿退社をし、離婚後に別の会社に再就職した。この就職先の紹介はもちろん、養育費を得る離婚のサポートなどをしてきたとか。その過程で焼けぼっくいに火がついて、女性と関係を持つようになったのが、6年前。軽井沢に行き始めたのもその頃だとのこと。幼い女の子は夫の娘で、彼女の意思で産んだそうです」
夫は「君のために十分尽くした。君のことは好きだけど、あの強欲な義両親の娘だと思うと、愛しきれない部分があった」と言ったそう。
「夫は、自分のこれまでの働きに見合う、相応分の資産を得て離婚したいと言ってきたんです。それも、全く資産価値のない僻地のアパートで、“ここに困難を抱える母子に住んでもらい、社会全体をよくする活動をしたい”などと言ってくる。浮気を責めると、私の両親が夫に行った発言のほか、聞くに堪えない侮辱の録音を出してきました」
そして、息子2人は夫の味方だという。
「夫は離婚せず、現状維持でもいいというんですが、どうしたものか。彼女も無欲な人らしくて。夫は“ずっと向こうの家にいたい”と言ってきて、悩んでいるんです」
結論は、まだ出ない。しかし、とっくに気持ちが離れた人を、いつまでもつなぎとめているのも苦しいと言い、離婚に向かって進めるとのこと。
妻側からの熟年離婚がニュースになっていますが、夫側からの離婚願望も非常に多い。先日、行政書士さんと話をしていて、墓じまい……すなわち、少子高齢化や都会志向などで先祖代々のお墓を終わらせるか、自分たちが住むエリアにお墓を引っ越すことが話題です。探偵界では「夫婦じまい」というか、長年の役割を果たしたので、余生は好きな人と暮らしたい……そのための調査依頼や、背景にその思いがある案件が徐々に増えていると実感しています。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/