取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「両親は小さい頃から仲が悪くて、父は私に無関心。私には母親がすべてでした。両親は熟年離婚に至ったのですが、私は昔から両親の離婚を願っていました。でも、離婚したら母は私を捨てて家を出ていくんじゃないかといつも怖かった……」と語るのは、真琴さん(仮名・36歳)。彼女は結婚も子どもも一切望まないという価値観を持っています。
母親に捨てられたくないとずっと思っていた
真琴さんは神奈川県出身で、両親との3人家族。小さい頃からまったく一緒に遊んでくれずいつも不機嫌な父親と、それに苦笑いを浮かべながら従う母親の構図を覚えていると言います。
「父には私のことが見えていなかったんじゃないかなって思うくらい、私に対して無関心でした。怒られることもなければ一緒に遊んでくれることも一切なかった。同じテーブルで食事をしていて、私がご飯をこぼしたり、食べたくないと駄々をこねたりしても、父が注意するのは躾をちゃんとしていない母でした。父は本当に私のことが嫌いだったんだろうなって、私もいつからか父に何かを期待することをやめて、ずっとそのままです。
母は父からよく怒鳴られていました。怒鳴られているときは、私は怖くて部屋に閉じこもっていたので詳しくは聞いていないけれど、私に関することが多かったんじゃないかな。それに対していつも『すいません』と敬語を使っていたんです。私は友人の家に泊まりに行くまでは、夫婦はこんなものなんだって思っていたほど、それは日常茶飯事で。仲良くタメ口で話す友人の両親を見て、すごく驚いたことを覚えています」
母親はよく真琴さんに「家を出ていきたい」と言っていたそう。
「『お母さん、このままいなくなっていいかな』とか、『消えてしまいたい』とよく口にしていました。その中で思ったのは“私と一緒に”じゃないんだなって。あんな父親はいらないけど、もし離婚して母が出て行ってしまったら父と2人きりになってしまう。それが怖くて、母の前ではいい子にならないといけないと常に思っていましたね」
【進学と就職のどちらがいいのかも自分で決められなかった。次ページに続きます】