日本の夏といえば「お盆」。郷里へ帰って家族と一緒にお墓参りする。8月13日に迎え火を焚いて先祖の霊をお迎えし、16日に送り火を焚いてお送りをするのが、日本の伝統の習わしです。そんな夏の行事も「新しい生活様式」によって変容を余儀なくされています。
さて、どのように「お盆」の行事を取り行えば良いのか、悩んでおられる方も多いのではないでしょうか?
株式会社メモリアルアートの大野屋が、「お盆」に向け、新しい生活様式下でのお盆行事の注意点やマナーの情報サイト「お盆の質問」(https://www.ohnoya.co.jp/faq/)を公開しています。参考にしてみては如何でしょう。

■新しい生活様式下での「お盆」はどうしたらいいの?

今年は、新型コロナウイルスの影響でお盆をどのように過ごせばよいかご相談をいただきます。感染拡大の状況を確認し、関係者に相談しつつ、安全を第一に考えた判断が重要です。

Q. 「今年が新盆の予定だが、親族を呼ばなくても大丈夫か。法要を行わない場合、どのように新盆を行えばよいか?」
A.親族の方に事情を説明し、ご家族だけで新盆を行っても良いのではないでしょうか。自宅に盆棚を飾り、新盆であれば、盆棚の周りを提灯や盆飾りでできるだけ明るく賑やかにし、白い無地の提灯「白紋天(しろもんてん)」を飾ります。

Q. 「毎年お盆には僧侶に棚経をお願いしていたが、今年はどうしたらよいか」
A.状況に鑑みて、不安があれば今年はご遠慮されても良いのではないでしょうか。お寺に事情をお伝えし、近親者だけで盆棚に手を合わせ、お食事をされて故人の霊をお迎えされても良いと思います。

■知っておきたい「お盆」の基本情報

Q:新盆(にいぼん)とは、どんな行事
新盆(にいぼん・あらぼん・しんぼん・はつぼん)とは、故人の四十九日が済んだ後、初めて迎えるお盆のことです。新盆には、故人の霊が初めて家に戻ってこられるので、普段のお盆よりも丁寧にお迎えします。僧侶を迎えて読経をしていただいたり、ご親戚や故人に縁があった方がお参りに来たりということもありますので、準備は通常のお盆よりは少し早めに行うことをおすすめします。

Q:お盆に準備すべき物は?
・盆提灯
お盆の期間中、「盆提灯」を飾ります。鎌倉時代、京都ではお盆に精霊を迎えるための目印として、門口に高い竿を立てて、その先に提灯を掲げる「高灯篭」が行われていました。その風習が、「盆提灯」に引き継がれたものだといわれます。

・盆棚
「盆棚」は、「精霊棚」ともいわれ、精霊をお迎えする祭壇です。棚にはござや真菰(まこも)を敷き、中央に位牌を安置します。ナスやキュウリで作った牛や馬、精進料理のお膳や、だんご、そうめん、季節の野菜や果物を供えます。また、洗った米になす、きゅうりなどを賽の目に刻んだものを混ぜて、はすの葉の上に盛り付けた「水の子」と呼ばれるものも備えます。棚の左右には灯篭、霊前灯、絵柄提灯を飾ります。

・迎え火・送り火
13日の夕方に自宅の門口などで「迎え火」を焚いて、霊を迎えます。「迎え火」はほうろくと呼ばれる素焼きのお皿の上でおがらを焚きます。15日の夜、もしくは16日に「送り火」を焚いて盆送りをします。精霊流しや灯籠流しなどで送る地域や宗派もありますが、最近ではそれができる海や川が少なくなっているようです。

Q:お盆の法要や棚経について
お寺では「盂蘭盆会」という法要を執り行います。7月に入ると「棚経」といって、菩提寺の僧侶が檀家をまわってお経をあげていただくという習わしがあります。新盆の場合には、僧侶を自宅にお招きして法要をお願いし、親戚や知人などを呼んで故人の供養をします。
お布施の額は地域やお寺との関係によって一概には言えませんが、棚経の場合には5,000円~10,000円、新盆のように特別にお願いをしてお経をあげていただく場合には10,000~30,000円を目安にする場合が多いようです。またお布施とは別に「御車代」を包むこともあります。

新盆の法要に招かれた場合には、手土産に添えて「御仏前」あるいは「御供物料」を持参します。「御仏前」の額は、故人との関係などによってさまざまですが、一般的には5,000円~10,000円が目安になっているようです。

■地域によって異なる「お盆」の行事や時期

Q:なぜ地域によって時期が違う?
夏の風物詩でもあるお盆ですが、地域によって時期が異なります。全国的には8月に行われる地域が多いですが、東京や神奈川県の一部などでは7月に行います。地域によって時期が異なる理由は、暦の国際基準化を目的に行われた明治時代の「改暦」が関係しています。お盆は7月15日を中心として、13日に迎え火、16日に送り火を行なっていましたが、旧暦(明治時代以前)から新暦に変わると、およそ1か月季節が早くなり、お盆の期間が農作業の繁忙期と重なってしまいました。そのため農業が盛んな地域では、ひと月遅れの8月13日から16日にお盆をするところが多くなりました。現在も地域によってお盆の時期はまちまちですが、大きく分けて7月13日から行う地域と、8月13日から行う地域があります。

Q:「お盆」は地域によって行う内容にも違いがある
■東北
宮城県では、8/16に“わら”で作った「盆舟」を流します。盆舟の舵取りは新盆を迎えた人の霊が行うので、沖へ流れ出れば供養できたと喜びます。昭和の中ごろまでは川に流していましたが、今はお寺に持ち寄るのが一般的なようです。青森県大川原では8/16の夜、「火流し」と呼ばれる行事が行われます。アシガヤを編み上げた長さ3m弱・幅1.5m・帆柱3mの舟3隻に火をつけ、1隻を5~6人ずつの若者が引きながら川を下ります。

■長野
川べりに出て、めいめいに仏様を背負う形をして家に帰ってくるのを迎え火を焚いてお迎えしますが、そのとき、「じいさん、ばあさん、このあかりでおいでおいで」と唱えます。お墓まで行って「この背中にのっとくれやね」と声をかけておんぶする真似をする慣わしもあります。

■静岡
静岡県西部(浜松市近辺)では、「内施餓鬼」と「寺施餓鬼(外施餓鬼)」と二つセットで、初盆の行事のことを指します。自宅での法要、お寺での法要をそれぞれ異なる日程で行います。
・内施餓鬼:自宅にお寺様が来て、お経をあげる
・寺施餓鬼:お寺で檀家の方が集まって行う合同法要

■関西
通常のお盆とは別に、8/23から8/24にかけて、「地蔵盆」と呼ばれる子供たちが主役の行事があります。準備は初日の朝に町内の人が協力して行い、地域で祀ってあるお地蔵様を綺麗に飾り付け、お供えものや灯篭を置きます。日中は僧侶の読経や子供へのおやつの配布があり、夜は踊りや花火など子供向けの催し物をして賑やかに過ごすことが多いようです。地域によっては、地蔵盆の朝、大きな数珠を囲んで座り、お経にあわせて順々に回す「数珠回し」が行われるところもあります。

■九州
綱引きが盛んです。理由は諸説ありますが、目蓮尊者が母親を地獄の釜から引き上げたことに由来する、綱引きの勝敗でその年を占うなどと言われています。福岡県筑後市の熊野神社で8月14日に開かれる「久富盆綱引き」では、全身にすすを塗って黒鬼に扮した子供たちが大綱を持って町内を引き回します。長崎県では、精霊流しが盛大に行われます。

■沖縄
本州では現代のカレンダーに合わせてお盆を行いますが、沖縄では旧暦の7/13~7/15がお盆です。沖縄の伝統的な舞踊「エイサー」は盆踊りの一種。この世に降りてきた先祖の霊を、太鼓を叩いて再びあの世へ送り出したと言われています。七夕もお盆につながる行事とされ、お墓の掃除をして、お酒、お茶、線香などを供えます。

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「新しい生活様式」になったとは言え、風習や伝統的な習慣まで取り止めてしまうのは忍びないものがあります。遠い先祖を思い感謝をする。また、亡くなった肉親を思い起こし心の中で再会する。そんなお盆の過ごし方は、けっして変えてはならないように思います。

 

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