一緒に暮らさないことでうまくいく家族のかたちもある
妙子さんは30歳の時に知人の紹介で知り合った2歳年下の男性と半年の交際を経て結婚。都内にマンションを借り、新婚生活をスタートさせます。そして2年後に男の子を出産。出産前後はしばらく母親の元で生活をしていたそうですが、都内のマンションに戻ってから徐々に夫婦の会話は子供を経由したものしかなくなっていったそう。
「実は妊娠する前から夫婦仲は微妙でした。ケンカもないけど、全然会話もないような冷めきった状態の中、妊娠がわかった感じです。子どもを身籠ったことで夫婦から家族に関係性が変わるから、もしかしたら修復できるんじゃないかなって思っていました。
実際に、実家から1時間もかからないところでしたが里帰り出産に向けてしばらく生活を別にしたことで一緒に住んでいた頃にはない、毎日連絡を取り合ったり、週末は私の実家で一緒に過ごしたりとうまくいっていたんです。
でも、出産後に落ち着いたことで都内のマンションに戻ると、徐々に子どものことしかお互い気にかけない姿が目に付くようになって……。子どもが2歳前の時に別居することになりました」
一度は離婚を考えたという妙子さん。しかし、別々に生活を始めるとうまくいく関係の中、どうすればいいのか悩んでいたと言います。そんな気持ちを母親はすべて受け止めてくれたそうです。
「別々に暮らしているんだから離婚しないといけないという固定観念があったんだと思います。一緒に暮らすのが夫婦のかたち、家族のかたちだと。でも、母親はすごくあっけらかんと『別居でうまくいっているなら、かたちにこだわる必要はないんじゃない』と言ってくれたんです。なんかフッと心が軽くなった気がしました」
平日は妙子さんが子どもと、週末は旦那さんが家に泊まり子どもとの時間を作っているそう。「私は親の離婚を経験しているけど、親の離婚より辛かったのは両親のケンカが続いていたこと。あのまま両親が離婚せずにずっとあんな雰囲気の家庭だったほうがしんどかったと思います。今は離れて暮らしていることで寂しい思いもさせているかもしれないけど、月に2回家族との時間を作るようにして、色んなところに出かけています」と語ります。両親の離婚よりも両親のケンカが強く残っているという妙子さんが見つけた新しい家族のかたちは一緒に暮らさないということだったようです。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。