取材・文/柿川鮎子

第三波の到来など、まだまだ勢いが収まらない新型コロナウイルスの流行の中、ペットの飼主さんの間で話題になっているのが「ペットのコロナストレス」です。「ドックランに行けなくなって運動不足」、「散歩で感染しないか心配」、「家族が家にいる時間が増えて、猫がストレスを抱えている」という悩みがTwitterでも話題になっています。

こうしたペットのストレス解消のために、飼い主さんができることは何か、横浜市磯子区でペットのホームドクターとして活躍中のひびき動物病院院長岡田響先生に取材しました。

ストレスサインを早くみつけよう

まず、うちの子がストレスをためているのかどうか。そこからスタートしてみましょう。岡田先生はペットのストレスサインについて以下の行動をあげています。

犬のストレスサイン

足や体を舐める回数が増える
自分の毛をむしる
自分の尻尾を追い回してくるくる回る
いつもより吠える回数が増える
無駄吠えが多く、絶えず吠える
軟便や下痢が多くなる
眠りが浅い、またはすぐに起きてしまう
四六時中、飼い主にくっついて、離れたがらない
食糞(大便を食べてしまう)
飼い主に触られるのを極度に嫌がる
すぐにうなったり、怒りっぽくなる
食欲が落ちて食べなくなる


猫のストレスサイン

足や体をしきりに舐める(舐める回数が増加)
自分の毛をむしる
自分の尻尾を追い回す
飼い主に見えないところに隠れて出てこない
これまでより鳴く回数が増える
排尿の回数が増えたり、血尿が出る
排便・排尿の回数が減る
病気でも無いのに軟便や下痢をする(下痢の回数が増える)
眠りが浅く、近寄るとすぐに起きる
必要以上に飼い主につきまとい、くっついて離れない
急に怒りっぽくなってきた
急に触られるのを嫌がるようになってきた
テーブルや棚から、様々なものを落とす


他にも「コロナ前までは全くしなかったことをするようになった」という行動があれば、それはペットのストレスサインかもしれません。

ストレスでトイレ関連に影響が出ることが多い

人間はストレスになると胃が痛くなるなど、身体に影響が表れますが、ペットはどうなのでしょうか。岡田先生によると、「大変大雑把な印象ですが、ストレスを受けると、犬は下痢や嘔吐、猫は血尿や頻尿の症状が多い気がします」と言います。

「犬の場合はお散歩時や排便などで異常に気づく事もありますが、しきりに鳴いておトイレを急かされたり、おトイレサインを出し続けた後におもらししてしまった、などというのもあり、普段と様子が違う、という診察依頼を受けることがあります

一方、猫の場合、おしっこトラブルがあると、何度も何度もおトイレに行ったり、おトイレに入ってしゃがんだままじっとしているのに、ちょっとしか尿が出ない、などの症状が出て診察依頼を受けるケースがあります。

猫はストレスを感じると隠れてしまい、出てこなくなる子も少なくありません。寒くなる秋~初冬は、猫も動きが減りトイレを控える子も出てくるため、ただでさえ膀胱炎などになり易い時期です。そういうときに長時間トイレを控える状況が続いてしまうと、我慢を繰り返して、膀胱炎になったりします。

また、トイレが汚れている、(テレビやゲームの音、他の猫が使ったトイレ、ヒトの気配やタバコや臭いなどで)トイレの周りが気になる状況にあると、トイレを使いたくないために、やはり同じように膀胱炎のきっかけになり易いようです」と岡田先生。

在宅ワークが極端に増えた人も多い中、日常の生活音などはいかがでしょうか?猫との距離が近い方は、ずっとうるさくなっていないでしょうか?振り返ると、わが家では結構ドアの音が大きく、バタバタ音を立てて締めていたような気がします。

岡田先生によると、猫のなかには、もともと1日1回しかおしっこをしないで溜めてしまう子もいて、要注意だと言います。

「どうして一回しかしないのか? かかりつけの先生に助言をいただきながら、おトイレの数を増やすとか、トイレの形状や砂などの材料を検討しなおしたり、長時間シートを利用している場合はやめてみる、など排尿回数の原因探求をお勧めします。

同時に食事もアドバイスをもらって変更してみる、尿検査をしてみるなどで、ストレスがあるのかどうかを診断してみる必要があるかもしれません」

トイレトラブルは「様子を見ない」ですぐ動物病院へ

そして、大事なのが、「トイレ関係のトラブルは、その日におさまらなければ、次の日には動物病院に相談して頂く方がいい」と早めの対応を呼びかけています。

「飼い主さんは、一日ぐらいとか言いますが、自分に置き換えて、ちょっと想像してみて欲しいのです。電車に乗っていてトイレに行きたくなった時、次の駅までの距離があってなかなか降りられないと、ものすごく苦しいですよね?

犬猫の排尿異常が見られる場合、それのさらに酷く度を越した状態と思った方がいいんです。すごく辛そうでしょう?なので、おしっこトラブルは早く対処が必要なんです。

そうした点からも、ストレスを感じているかな?と飼い主さんが気づいたら、まずはトイレ関係で、今以上の負担を掛けないような配慮が必要です。

特に、猫は汚れたトイレを嫌います。ストレスフルな状態で身体に強い負担を抱えているのに、さらにトイレ自体にもストレスがかかるとなると、ダブルパンチです。いつもトイレを清潔に保つことが大切です」と岡田先生。

症状を長引かせないように注意

犬の場合はいつもの便の状態よりも緩かったり、食べた物を吐くような症状が出るケースが多く見られるそうです。ストレスが原因の症状であっても、繰り返してしまうと治りにくくなり治療は複雑化してしまいます。治療食をうまく使って、消化の負担がなるべく増えないようにやってみるのも有効だと思います。

病気の時はもちろん、病気でない時でも、季節の変わり目などでも、「あれ?いつもと違う」と思った時には、消化のいいものを与えていただくことで、ひどくならずに済むはずです。

しかし、ストレスかその他の病気なのか、飼い主さんが見極めるのは難しいので、やはり症状が出た時にはホームドクターに相談して、検査をしてみる方が良いでしょう。

「ストレスはペットの身体に影響を与えて、健康被害を受けます。コロナによるストレスを完全に取り除くのは難しいとしても、人間と同じように上手にストレスと付き合い、少しずつ解消してあげるコツはあります」とアドバイスしてくれました。

犬は満足度の高い遊びで、ストレス解消に

「まずはペットにとって、ストレス解消になる遊びの質を上げることを目指してみましょう」と遊びの工夫を提案してくれました。

「遊びの“質”とは、ペットが感じる“満足度”のことです。質の高い遊びを提案することで、満足度がアップして、ストレス解消につながります。簡単に言えば、“ペットにとって楽しく感じる好きなことをたっぷりさせてあげること”です。

犬種や猫種、年齢、その子の個性によって、楽しいと感じる遊びはそれぞれ異なります。犬の場合は、その犬種が歴史的にどんな目的で作出された種であるかを知ると、本能を満足させてあげることができるかもしれません」と言います。

ゴールデン・レトリバーは水陸両用の鳥猟犬として作出されたので、水が大好き。走るための身体をもつイタリアン・グレーハウンドは思い切り走ると満足する犬種です。うちの子にどんな作出の歴史があるか、調べてみるのも楽しそうです。

また、犬は嗅覚を使って獲物を探すのが大好きです。タオルや新聞紙を積み重ねた中に隠された一粒のドッグフードを見つける遊びは、掘り出す楽しさと、見つけた時の達成感の二つで満足させることができる遊びになります。

おやつの与えすぎには注意!

岡田先生はストレス解消に伴い、肥満について注意を呼び掛けています。「うちの子は食べるのが一番好きだからと、おやつを与えすぎるのは禁物です。あくまでも遊びのニーズを満たすことが大切です。

遊びも飼い主さんの都合に合わせて、適切な程度や頻度で行ってかまいません。短くても楽しいと感じる時間があれば、ストレスは解消できます」とアドバイスしてくれました。

「密になる道路を避けて、散歩コースを変更するなど、いつもより目先の変わった場所で、いつもと違う臭いを嗅ぐだけでも、犬にとってストレス解消になる場合があります。

お留守番が長い子の場合は、一人の時は寝ている時間が多いので、一緒にいる時間のうちに少しでも刺激的に動く方が良いでしょう。運動の時間は貴重です。特に中高年の場合は、認知症予防にも繋がるので、コミュニケーションを大切にしてあげてほしいです」 (岡田先生)。

楽しい小さなイベントを一緒に過ごして、お互いのストレス発散に楽しむのはいかがでしょう?

新しい生活に伴う、猫のストレス解消方法を考える

猫のコロナ関係のストレスでは、人間の生活スタイルの変化に注意しましょう。留守で静かな時間を長く過ごしていた猫が、コロナによるステイホームで絶え間ない生活音がする家の中で過ごし、ストレスをためることが多いようです。

特に子供たちが猫と遊びたがったり、飼い主がかまいすぎてストレスになっていないでしょうか。我慢して静かな時間をつくったり、テレビや音楽の音を少し小さくするだけでも猫のイライラは解消するかもしれません。

コロナで生活が変わってしまった方は、できるだけ「コロナ前の生活に近づける」ことが大切なのかもしれません。

とはいえ、人の生活も新しく変化しています。ペットも新しい生活を受け入れてもらえるような工夫が、今、必要になってきたのかもしれません。

犬と同じく、猫のストレス解消法も「その子が求めているニーズに対応する」ことを目指します。静かにお昼寝をしたい子なのか、飼主さんの膝の上で撫でてもらいたい子なのか、その子が好きなことをなるべくしてあげることが、ストレス解消になります。

特に猫の場合、「トイレの場所は特に敏感なので、なるべく人の近づかない静かな場所でゆっくりトイレができるように見直しましょう。トイレの場所を移動する時は、必ず前の場所をそのまま保ちながら、新しくプラスアルファすること。古いトイレを取り除きたい場合は、新しい場所に完全になれた段階になってからにします」と岡田先生はアドバイスしています。

飼い主さんの知恵と工夫で、楽しい時間を増やして、ストレスを解消し、免疫力をアップさせて、病気に強い身体づくりを実現させましょう。コロナの今は、ペットとの絆を深める、良いチャンスなのかもしれません。


取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

文/柿川鮎子 明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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