選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)

20世紀初頭に爛熟期を迎えていた後期ロマン派の、秘められた名作がまとめて聴ける『レーガー:ベックリンによる4つの音詩、ニールセン:序曲《ヘリオス》、ツェムリンスキー:交響詩人魚姫》』は、全てのオーケストラ音楽好きに勧めたい1枚である。

ここに収められているのは、熟し切った甘い果実が、腐る直前が一番柔らかく美味しく、芳香を放つような、後期ロマン派の秘曲たちである。墨田区のすみだトリフォニーホールを本拠に活動する新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督・上岡敏之のタクトは、巨大編成の管弦楽作品の充溢した響きをダイナミックに、官能的に描き出している。

画家ベックリンや童話作家アンデルセンの世界と密接につながる作品の組み合わせも好奇心をそそる。他のジャンルと結びついたときに、音楽がどれほど雄弁たりうるかということの、これは見事な例である。>>試聴はこちらから

【今日の一枚】
『レーガー:ベックリンによる4つの
音詩、ニールセン:序曲《ヘリオス》、
ツェムリンスキー:交響詩《人魚姫》』

上岡敏之指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団

2017年録音
発売/オクタヴィアレコード
電話:03・6778・4141
販売価格/3200円

文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)

※この記事は『サライ』本誌2018年8月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。

 

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