選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
クラシック音楽の世界も、いまどんどん変わってきている。名門音楽一族の出身で、ウィーン・フィルやウィーン・コンツェントゥス・ムジクスのメンバーでもあるチェリスト、マティアス・バルトロメイが、ジャズや民族音楽にセンスある活動を続けてきたヴァイオリニストでマンドラ奏者のクレメンス・ビットマンと組んだ弦楽デュオ、バルトロメイ&ビットマンのアルバム『新構築』は、それを象徴する1枚である。
粘っこく鋭角的なリズム。セクシーでクール。彼らの音楽は、もはやジャンル分けなどというものが無意味であることを示している。
彼らは決してクラシック音楽のポップス化をやっているのではない。伝統に敬意を払いつつも、すべてがユニークなオリジナル曲ばかりであり、そこにあるのは、弦楽器が本来持っていた野性の解放である。
あるときはバリバリと激しく、またあるときは静かに甘く歌う。誰もが楽しめる、ワクワクするような音楽。こんな新しさ、若々しさもまた、ウィーンの一面だ。
【今日の一枚】
『新構築』
バルトロメイ&ビットマン
2017年録音
発売/THE MUSIC PLANT
http://www.mplant.com/bb/
商品番号/RUCD171
販売価格/2300円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年5月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。