文・構成/鈴木隆祐
70年代から80年代にかけて『霊感ヤマカン第六感』(朝日放送系)というクイズ番組が放映されていたが、霊感も、山勘も、第六感も、意味においてそう違いはない。直感も、インスピレーションも、ひらめきも、同様だ。
『大辞泉』で【第六感】を引くと、「五感以外にあって五感を超えるものの意」とある。その身近な例が「虫の知らせ」「胸騒ぎ」だが、双方ともどちらかといえばネガティブな意味合いで使われる。
この第六感については、さまざまな分野の学者が科学的な証明を試みている。例えば、クリプトクロムという特殊なタンパク質の働きで地磁気を感知した結果ではないかとか、その計測実験を試みて、ある程度成果が上がったなど、科学誌の“埋め草記事”には、けっこうそんなトンデモ説が載っていたりする。
ただ女性は男性よりも嗅覚に恵まれ、言語能力にも長け、勘が鋭いというのは確かなことらしい。どうやら脳内の「脳梁(のうりょう)」という部分に男女差があり、女性はその後方部分の膨大部が球状に太くなっていて、素早く情報処理ができるせいらしい。
また、有名な「暗黙知」の発露として第六感という概念を理解することもできよう。「暗黙知」はハンガリーの哲学者マイケル・ポランニーの提唱した「人間には科学的な知や言語で表現できる知を越えた、暗黙的な知が備わっている」という説。どうしたら自転車に乗れるか、ほとんどの人が上手く具体的には説明できないのに、一度乗り方を覚えたら忘れない、という事例などが当てはまる。
虫の知らせだって、気温や湿度、相手の表情などの情報が先に入っているため、その変化を察知した結果、少しでも「なにかおかしい」と感じ、疑念が生じている状態を言うわけだ。
要するに“勘の鋭い人”とは、五感で得る情報を脳内で常人以上にデータベース化できるため、無意識のうちに瞬時に誤差を見出だすことができる、ということなのかもしれない。
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しかも、この第六感を鍛えるにも方法はあるという。
2008年より続いている、理化学研究所と富士通の合同プロジェクト「棋士の直感力測定」によれば、直感が訪れるスピードは0.1秒~0.3秒であると判明している。 つまり「何かを選択しよう」と考えたコンマ何秒後には、もう直感の答えは出ているということなのだ。
また2013年に同じく理化学研究所が発表した調査結果では、世界で4番目に性能の高いスーパーコンピューター「京」でさえ、人間の「脳」が1秒間に行っている情報処理に40分かかったことがあるという。
このところ、AI(人工知能)が人の脳を乗り越えるのはいつか、という議論が盛り上がっているが、せいぜい追いつかれないうちに、人間ならではの直感力を磨いておくに越したことはない。
その具体的な方法としては、カード(トランプ)を伏せた状態でめくって、数や柄を当てる遊びをする、ということがある。
最初は4分の1の確率で当たる柄だけにし、ある程度繰り返した後に、今度は数当てをする。そして最後には数と柄を当てるように、訓練するのである。コツは「考えない、イメージすらせず、カードをめくったら即答する」ということ。これはESP(超感覚)研究で伝統的なメソッドとなっている、カードを使った実験の応用である。
この“直感千本ノック”はひとつのアイデアではあるが、日頃から「直感力」を意識して使うようにしておけば、これまで気がつかなかった「虫の知らせ」や「天からの啓示」をキャッチする確率も増やせるはずだ。
文・構成/鈴木隆祐
監修/前刀禎明
【参考図書】
『とらわれない発想法 あなたの中に眠っているアイデアが目を覚ます』
(前刀禎明・著、鈴木隆祐・監修、本体1600円+税、日本実業出版社)
http://www.njg.co.jp/book/9784534054609/