最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。
この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を⾼く保つことにお役⽴てください。
「脳トレ漢字」、今回は「髪状」をご紹介します。言葉の由来を紐解きながら漢字への造詣を深めてみてください。

「髪状」は何と読む?
「髪状」の読み方をご存じでしょうか?
正解は……
「かんざし」です。
『小学館デジタル大辞泉』では「額の上の髪の生えぐあい。髪のようす。髪」とあります。主に額の上の髪の生え方、または頭髪全体の様子を指します。例えば『源氏物語』では「額つき、髪状、いみじううつくし」とあり、女性の髪の美しさを細やかに描写しています。
「かんざし」と聞くと髪飾りとしての簪(かんざし)を思い浮かべる方も多いでしょう。「髪状」はあくまで髪そのものの状態を表すのです。
「髪状」の由来
「髪状」の読み方は、「かみ」(髪)の音が「かん」に変化し、「さし」が物のようすを表す古語に由来しています。古い文献や詩的な表現の中に、「翡翠の髪状」(ひすいのかんざし)という言葉が登場することがあります。これを「翡翠で作られた髪飾り」だと思って調べると、少し意味が違うことに気づかされます。
ここでの「髪状」は、飾りのことを指すのではなく、「髪の生え際」や「頭髪の美しい形」そのものを指しているのです。
「翡翠」は、宝石のヒスイや鳥のカワセミを意味し、転じて「濡れたように艶やかな黒髪」の形容として使われます。つまり「翡翠の髪状」とは、単に高価な飾りを挿していることではなく、カワセミの羽のように美しく整えられた生え際のラインや、髪そのものの美貌を讃える言葉なのです。
額(ひたい)に宿る品格
江戸時代の浮世絵、例えば喜多川歌麿の美人画を思い出してみてください。
女性たちの美しさは、着物の柄や髷(まげ)の形だけでなく、この「髪状」つまり、生え際の繊細な描写に宿っています。
かつて、額の形や生え際の美しさは、その人の品格や運勢を表すとさえ考えられていました。「富士額」(ふじびたい)などがもてはやされたのもその一つです。
髪飾り(簪)は、あくまでその美しい「髪状」を引き立てるための脇役だったのかもしれません。
現代の私たちはヘアアクセサリーそのもののデザインに目を奪われがちですが、「翡翠の髪状」という言葉は、土台となる髪の手入れや、生え際の美しさにこそ気を配るべきだと、教えてくれているようです。

***
いかがでしたか? 今回の「髪状」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 鏡を見る時、飾りに頼るだけでなく、ご自身の「髪状」の美しさにも目を向けてみてください。
来週もお楽しみに。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











