「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
今回は「愛敬」をご紹介します。心をつかむことでさらなる深みを得るこの漢字への造詣を深めてみてください。

「愛敬」は何と読む?
「愛敬」の読み方をご存じでしょうか? 「あいけい」とも読みますが……
正解は……
「あいきょう」です。
「あいきょう」と聞けば、「愛嬌(あいきょう)」という漢字を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。
『小学館デジタル大辞泉』では「にこやかで、かわいらしいこと。ひょうきんで、憎めない表情・しぐさ。相手を喜ばせるような言葉・振る舞い。」と説明されています。「愛敬がある」「愛敬を振りまく」といった形で使われ、主に人(特に女性や子供に対して使われることが多いですが、性別を問いません)や、動物などの魅力的な様子を表す言葉です。
歴史的には「あいぎょう」と読むのが一般的でしたが、近世以降「あいきょう」の使用が増えました。「あいけい」という読み方もあり、こちらは「敬愛」という意味で使われることが多いです。
「愛敬」の由来
「愛敬」は、仏教用語としての「愛敬相(あいぎょうそう)」から派生したと考えられます。この「愛敬相」は、仏や菩薩の優しく温和な様子を指す言葉で、それが一般の人々にも影響を与えて広まっていきました。古典文学のなかでも『宇治拾遺物語』や『今昔物語』などで、人物の魅力的な性質を描写する際に使われています。

「愛敬」は、ただ親愛と尊敬の念だけでなく、顔つきや振るまいが優しく愛らしいことも含む言葉なので、人間関係においても非常に重要な概念です。
「愛敬」は作れる?
私たちは日々、様々な人と関わりながら生きています。「愛敬」のある人は、その場の雰囲気を和ませ、人間関係を円滑にする力を持っているように感じます。では、この「愛敬」は、生まれつきのものなのでしょうか、それとも意識して身につけられるものなのでしょうか。
「愛敬を振りまく」というと、少しわざとらしいニュアンスを含むこともありますが、「愛敬」の本質は、相手への思いやりや、自分を開いて見せる素直さにあるのかもしれません。無理に作り笑いをするのではなく、相手に関心を持ち、穏やかな気持ちで接すること。そして、時には少しお茶目な一面を見せること。そうした自然な振る舞いが、結果として「愛敬」として相手に伝わるのではないでしょうか。
***
いかがでしたか? 今回の「愛敬」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか?
日本人が古くから大切にしてきた「人と人との和」を支える要素である「愛敬」。ぜひその魅力を楽しみつつ、日々の生活でも意識してみてください。
参考資料/
『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
『新漢語林』(大修館書店)
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
