
I:なんだか、源内のことをいっぱい調べている様子が垣間見えて、ちょっと感動ですね。さて、私が印象深かったのが、渡辺謙さんとのことについて語ってくれた箇所です。
すごくありがたい経験でした。これは今回の大河で一緒にお仕事をさせていただいたスタッフさんだったり、床山さんだったり、メイクさん、監督との出会いもそうなんですけど、やっぱり渡辺謙さんと、田沼意次と平賀源内としてお芝居させて頂いて、すごく嬉しかったです。さりげなくアドバイスもして下さいましたし。
(第16回の)牢屋のシーンの時、一回そこに座っちゃったら、僕、根を張っちゃうものだから、動かないんですよ。すると謙さんも気を遣って、「ずっといなくていいじゃん」といってくださる。「ずっと、ぴんと張っていたら、本番になった時に逆に切れるから、そこは調整した方がいいよ」というアドバイスをくれました。ちゃんと見ているんですよね。この人物はどういうものを培って、今、このポジションで芝居をしているのか、この人のベースはどこにあるのか、というのが見えるんですね。それぞれの芝居をする人たちに対して、共にセッションしていくことをすごく楽しんで下さる方で、素敵な方でした。そういうことができるからこそ、渡辺謙さんなんだと思います。
A:さすが、「座長経験者」という話ですよね。いい話です。渡辺謙さんとのエピソードはさらに続きます。
クランクアップの時も握手して、「(脚本の)森下さんにはこの後も出してもらうよう言っておくから」っていってくださって。いや、そういってくれるのって嬉しいじゃないですか。渡辺謙さんにそういう気さくさがあって。本当にいい経験をさせていただきました。
I:ちょっとこれで源内が退場するとは、早すぎますね。もっともっと見たかったです。そういうふうに感じる視聴者の方も多いのではないでしょうか。
A:なんらかの「源内スピンオフ」、やってほしいですね。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
