I:最高権力者も大変ですね。さて、今週は道長の「家司的」存在に出世した百舌彦(演・本多力)さんの「きみかたり」が『光る君へ』公式ホームページにアップされましたね。まずは、病でぼんやりとする道長の様子を見ての感想です。
いや~……もう、悲しいというか……マジで柄本さんというか道長様がマジでホンマに死にそうな感じやったんですよね。なんかもう、哀しみ……哀愁の方の哀しみがむちゃくちゃ……「なんとかして生きてください」っていう風に思いました。自分がお薬を持っていっても、認識しても、一切飲もうとしないという。だから、何か一種、諦めている、ただ体調が悪いというだけではなく、諦めているというか……自分の無力感も感じましたし、たぶん自分じゃ何もできない、ただ祈るしかできないという、それを見て感じました。
A:道長が子供の頃から付き従ってきた百舌彦ですから、親兄弟以上に道長をよくわかっているのかもしれませんね。現代ではそういう立場の人というのは、なかなかいないかもしれません。
I:藤式部(まひろ/演・吉高由里子)に道長が倒れたことを知らせに走ったのも、百舌彦らしいなと思いました。なんとか主を助けたい、主を元気にできるのは藤式部しかいない、と咄嗟に思ったのでしょうね。本多さんが、藤式部と道長との関係について百舌彦目線ではどう映っていたのか、話してくれました。
「わからない関係」だと思いますよ。婚姻関係を結んでいるわけでもないですし、恋人のように出会ったわけでもないし、でも、何かの折にわざわざ家に行ったりとか、どんな関係ってわからずだと思いますね。その時代において、ひとつの言葉で形容できるような関係ではないと思うんですね。今やったら「ソウルメイト」とかそういう言葉があると思うんですけど。だから、本当に「わからない関係」が一番もしかしたら合っているのかなって。今考えたら、新しい関係性というか、見たことがない、ふたりだけにしかない関係性なんじゃないかと思います。そこには立ち入れないでしょうし、ついて行って、ついて帰るっていうことしか自分はできない。でも、あの距離感だから、普通に4年くらい会っていなかったりもするじゃないですか。でも、会っても戻れる、そういう友達とかはみなさんいらっしゃるでしょうけど、それが男女であったり、かといって会うたびに何かそういう抱擁したりとか口づけをしたりするわけでもないじゃないですか。年とともに変わるのかもわからないし……うーん、なんか、美しい関係だなとは思いますけど。
I:百舌彦さんのファンはなんとなく気がついているのだと思うのですが、かつてまひろの従者の乙丸(演・矢部太郎)とわりと昵懇な関係のように見えていましたが、最近は烏帽子も立派になり、乙丸とも以前のような関係ではありません。
A:乙丸は乙丸でずっと変わらずですからね。そういう従者の人間模様なんかも面白いですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり