I:撮影前日の眠れぬ夜が、俳優人生で初めての経験だというのです。それだけ、本作の本多正信役というのは重要なポジションだということが伝わってきます。このくだりに触れただけでゾクゾクしてきました。松山ケンイチさんは、さらにこんなことも語ってくれました。
今作の正信は、ずっとつながれてきた「武士」という概念から少しはみ出てしまっているところがあり、武士の身分でありながらも、“今”の武士というものに対して思うところがある。だから徳川家臣団とも少し距離があるというか、違う目線で武士そのものを見ているようなキャラクターだと思います。そこに嫌われる要素や自由さがありますし、演技としても遊ぶことができるような立ち位置なので、そういう部分でも楽にやらせていただいています。正信は第 9 回でいったん抜けますが、最後までぜひ見届けていただきたいなと思います。
A:松山さんが言及している通り、本多正信は、ここでいったん退場します。繰り返しになりますが、後に家康に帰参することになるわけです。追放された後、正信が何を見て、どのような経験をして、その結果、どういうきっかけで家康に帰参することになるのか。そのストーリーに第9回で触れられた「お玉」のことが絡んでくるのか、こないのか。
I:感動の帰参シーンを期待しているということですよね。
A:感動? いや、そんな軽い言葉ではなくて、心を揺さぶられるような、心が震えるような、そして手に汗握るような……、そんな回になることを待望しています。
I:制作陣にはプレッシャーですね(笑)。本多正信は、なんといっても家康の「懐刀」と呼ばれるようになる存在ですからね。「大河史上屈指の名場面だ!」と感じるような場面を期待しましょう。
A:その時を心して待ちたいと思います。なんか、楽しみばっかりが積みあがってきますね(笑)。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり