ライターI(以下I):頼朝挙兵に集った範頼(演・迫田孝也)、義円(演・成河)、義経(演・菅田将暉)と非業の死を遂げて来ましたが、義時(演・小栗旬)、政子(演・小池栄子)の妹と結ばれて、この男だけは安泰かと思われていた阿野全成(演・新納慎也)が、鎌倉殿頼家(演・金子大地)の勘気に触れて斬首される場面が描かれました。
編集者A(以下A): 劇中では、頼家に対して呪詛をしたわけですから、ばれたらダメですよね。しかし、壮絶な最期でした。頼朝挙兵に真っ先に駆けつけた全成は、還俗することもなく、合戦に赴くこともなく、頼朝の側近として仕えていたのでしょう。
I:今回は、全成・実衣を演じた新納慎也さん、宮澤エマさんから寄せられたコメントを交えながら展開したいと思います。まず全成役の新納さんは、ラストシーンについて、こんなふうに語っています。
〈本当に悲しい、すてきな最期を描いてくれたと台本の段階でも思っていましたが、それをさらに何倍もすてきなシーンにしてくださった演出とスタッフのみなさんに、今はもう本当に感謝です。みんなの努力と、みんなの力。僕だけではなくて、演出だけではなくて、三谷さんだけではなくて、照明・音響・美術・撮影など、すべてのセクションの努力が報われました。今、撮影が終わったばっかりですけど、すべての皆さんの努力が報われた、いいシーンになったと思っています〉
A:挙兵に集った兄弟の中で最後までしぶとく生きながらえてきた全成ですが、正直、その最期がこんなにドラマチックに描かれるとは予想外でした。本編(https://serai.jp/hobby/1085181)でも触れましたが、最後の最後に〈人知を超えた力〉を思いきり発揮してくれました。
I:醍醐寺で20年近く修行した経験はダテじゃないって感じでしたよね。
A:今週の劇中でも〈お前はほんとうに赤が似合うな〉と全成が実衣に声かけしていましたが、ラストシーンの全成の姿につながっていたとは不意打ちでした。新納さんはこんなふうに語っています。
〈斬られて流れた自分の血の赤い色を見たとき、ずっと実衣ちゃんに「君は赤が似合うね」と言ってきたので、赤という色で実衣を思い出したんですよね、あの瞬間に。とにかくあの瞬間は実衣のもとに帰りたい、実衣に会いたいという一心で、実衣への思いだけで最後の力を振り絞って、というシーンでした〉
I:ああ、そうか、実衣の髪飾りの赤と全成が流した血の赤色がこんなふうにつながって来るんだと思うと、このコメントがなんとも胸に染み入るんですよね。ということは、知らず知らずのうちに私は、全成・実衣夫婦に感情移入していたのかなって、ちょっとびっくりでした。
【ほんとうに辛く切ない全成の最期。次ページに続きます】