文/倉田大輔

入道埼灯台(秋田県)/著者撮影

入道埼灯台(秋田県)/著者撮影

誰もが目にしたことがある「灯台」。旅行などで訪問した方も多いのではないでしょうか。
近年では、「灯台」の魅力に魅せられ日本や世界の灯台を巡る「灯台女子」も誕生しています。

明治元年11月1日(灯台記念日)に日本初の洋式灯台「観音埼灯台(神奈川県横須賀市)/現存は3代目」が起工され、150年以上の歴史を歩んでいます。

最近では、本来の「灯台」機能に加え、史跡建造物・資料展示室、プロジェクションマッピング・各種イベントなど、「灯台」を観光や地域振興に活用することが模索されています。

私は「地域活性化に資する灯台活用に関する有識者懇談会/海上保安庁(霞が関)」を傍聴し、医師免許(&日本温泉気候物理医学会認定医)と小型船舶免許を保有し、マリンスポーツ好きの観点から「灯台に行くと元気になり、健康にも役立つ方法」を考えました。

灯台が書かれている海図(故青木氏所蔵品)/著者撮影

灯台が書かれている海図(故青木氏所蔵品)/著者撮影

海の近くや高台、周辺が公園などに整備されている「灯台」も増えているので、健康に活用する方法は沢山ありそうですが、ここではダイエットと気候療法の観点からご紹介します。

その1)ダイエットに活用する! 灯台の消費カロリー第1位はどこ?

肥満・メタボリックシンドロームに頭を悩ます方は多いかもしれません。
まず「灯台」をダイエットに活用出来るか考えてみましょう。

日本には、開館時間内なら内部に入ることができる「参観灯台(登れる灯台)」が、東北~沖縄に計16箇所あり、平成30年度の年間入場者数は約67.8万人でした(図1)。

図1 日本全国の参観灯台一覧
大平成30年度 参観灯台入場者数

資料提供:海上保安庁(一部筆者にて編集)

映画『喜びも悲しみも幾歳月(1957年公開・松竹制作)』で、高峰秀子さん、佐田啓二さんが灯台守夫婦を演じましたが、劇中で観音埼灯台、安乗埼灯台などが登場します。
現在、「灯台」の管理や整備は、海上保安庁が行っています。

「灯台」の上部(レンズが配置されている場所:灯室)に行くためには、階段を登る(運動)ことになります。
そこで、参観灯台16基にある階段を「身長170cm 体重70kg 年齢50歳 男性」が登り降りしたと仮定ます。普通の階段より急角度であるため通常の階段昇降運動消費カロリーに30%増し、各灯台の消費カロリーを調べました。

日本全国の参観灯台(16基)の階段を登り降りした場合の消費カロリー一覧

参観灯台16基中「消費カロリー灯台」の第1位は出雲日御埼灯台(47.6kcal)、第2位は尻屋崎灯台と塩屋埼灯台(37.4kcal)、第3位は入道埼灯台(33.6kcal)という結果でした。

「ジョギングを20分行った時の消費消費エネルギー量172kcal」なので、4~6往復する感じです。なかなかハードですし、階段の角度が急なので、急いで駆け上がることは危険です。
灯台の構造上、エレベーターの設置は難しく、歩行が不自由な方にとって階段登り降りは難しいかもしれません。

灯台と灯台周辺スペースを使ったダイエット・健康イベントなどを開催すると良いかもしれません。

階段数を表示するだけでは苦しい修行風ですから、「灯台内の階段に消費カロリーを記載する」など多少の楽しみ要素を入れると、「灯台」をダイエットに活用出来るかもしれませんね。

その2)気候療法として、灯台を活用する!

「気候療法」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、紀元前400年頃ヒポクラテスが論文で紹介している歴史ある治療法です。

現代的な「気候療法」の定義は、「日常生活と異なる気候環境に行き、病気治療や休養などを行う自然療法」です(民間療法ではありません)。
気候は「気温、水蒸気、風、湿度、気圧、紫外線など」様々な要素で人体に作用します。

明治9年ドイツから東京大学教授に招聘された「ベルツ(エルヴィン・フォン・ベルツ)医師」は、自然環境や温泉等を健康に活用することを提案しています。ベルツは伊香保温泉(群馬県)など温泉地整備に関わり、「海水浴が健康に役立つ」ことを明治政府に進言しています。

「灯台」は沿岸部・海の近くにあり、「気温差が少ない、湿度が高い、海風中に塩分を含む海岸性気候」という特徴があります。海岸性気候は、湿気や塩分(ミネラル)を豊富に含むことから、気道(気管や気管支)の炎症を和らげる、新陳代謝を高める、自律神経を安定(リフレッシュ)させる働きがあります。

具体的には「アレルギー性鼻炎、慢性気管支炎、自律神経失調症、うつ病」などに効果的な環境と言えそうです。急性期の心臓疾患や脳血管疾患などを除けば適応禁忌も少なく安全性も高いです。

現代人を悩ますメンタルヘルスケアや健康増進法として、「灯台に行くと元気で健康になる!」と私は考えています。

金華山灯台(宮城県)の内部/写真撮影 不動 まゆう  注)金華山灯台は宮城県牡鹿半島から約1kmに浮かぶ島に建つ。 マダニやヒルが生息し、なかなか危険。

金華山灯台(宮城県)の内部/写真撮影 不動 まゆう
注)金華山灯台は宮城県牡鹿半島から約1kmに浮かぶ島に建つ。マダニやヒルが生息し、なかなか危険。

そもそも灯台とは?

「灯台」は船が安全に進むための道しるべ(航路標識)の1つです。「光が点滅するのが灯台」というイメージを持っている方も多いかもしれません。

「灯台」は設置される場所に応じて形や色、光るリズムや光の届く距離が異なっています。海を進む船に航路や浅瀬を示す、海上に浮かぶブイ(灯浮標)や電波を出す航路標識もあります。

日本周辺には、灯台(沿岸灯台、防波堤灯台)3151基に加え、海上に浮かぶブイ(灯浮標)などをふくめ、5213基の航路標識があります(平成30年度末時点)。

 図2 はたらく灯台チーム <航路標識の設置例>
「海を照らして150年~航路標識の歴史と現在~/海上保安庁20P」より編集

「海を照らして150年~航路標識の歴史と現在~/海上保安庁20P」より編集

灯台単独で仕事をするだけでなく、図2のように周辺の航路標識と一緒に「灯台チーム」を形成し、安全を担っていることもあります。遠い場所から帰港する人は灯台を見て、「我が家(港)に帰って来たなあ」と感じることもしばしばとか。
自動車のカーナビと同じように、海でもGPSなどの新たな航海機器が登場しています。
技術がどんなに発達しても、実際に操船する場合は、レーダーやGPS・海図だけでなく、「灯台を人間の目で確認する」ことが重要なのです。

私は「灯台の第1目的は安全を守る航路標識である」と考えています。
さらに「灯台に行くと元気になる!」ことが加わり、人々の人生や健康に光を照らし、生きる希望や方向を導く「心の灯台」になると良いですね。

資料・取材協力:海上保安庁 政策評価広報室、交通部企画課
写真協力: 不動 まゆう 「灯台どうだい?」編集長、著書「灯台はそそる(光文社新書)」

池袋さくらクリニック 院長 倉田大輔

 取材・文/倉田大輔
池袋さくらクリニック院長。日本抗加齢医学会 専門医、日本旅行医学会 認定医、日本温泉気候物理学会 温泉療法医、海洋安全医学・ヘルスツーリズム研究者、経営学修士(明治大学大学院経営学研究科)

2001年 日本大学医学部卒業後、形成外科・救急医療などを研鑚。
2006年 東京都保健医療公社(旧都立)大久保病院にて、
公的病院初の『若返り・アンチエイジング外来』を設立。
2007年 若返り医療や海外渡航医療を行う『池袋さくらクリニック』を開院。
「お肌や身体のアンチエイジング、歴史と健康」など講演活動、テレビやラジオ、雑誌などへのメディアに出演している。
医学的見地から『海上保安庁』海の安全啓発への執筆協力、「医学や健康・美容の視点」から地域資源を紹介する『人生に効く“美・食・宿”<国際観光施設協会>』を連載。自ら現場に赴き、取材執筆する医師。
東京商工会議所青年部理事
東京商工会議所 健康づくりスポーツ振興委員会委員
東京商工会議所 豊島支部観光分科会評議員

【クリニック情報】

池袋さくらクリニック
http://www.sakura-beauty.jp/
住所 東京都豊島区東池袋1-25-17-6F

【お問合せ】

03-5911-0809(完全電話予約制,月曜休診,10:00~19:00)

 

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