悩ましい「脳の老化」進行を防ぐ2つの方法を学ぶ【芝浦工業大学公開講座より】

患者520万人、予備群まで加えたら1000万人近い人が、さらにその家族まで加えたら数千万人の人が悩み苦しんでいるかもしれないという「認知症」。今からできることはないのか。どうすればいいのか。

2017年1月14日に芝浦工大で行われた「脳の老化ってどんなこと?~からだのサビが認知症を引き起こす!~」と題する福井浩二先生(芝浦工業大学システム理工学部教授)の公開講座には、定員を超える受講生が集まっていた。

■「脳の老化」は切実な悩み

「歳を取ったなあ」とつくづく感じる第一の身体の部分が、目だ。

筆者は新聞の字が読めなくなり、メガネ(もともと近視)を外したほうがよく見えると気がついた。だが、かなり紙面に顔を近づけなければならず、そのうちパソコンの字も見えなくなってきた。これでは仕事にさしつかえると、遠視用のメガネを作った。

顔も老けた。多くの女性たちが鼻の脇から口に向かってのびる「ほうれい線」が濃くなって老け顔に見えると悩んでいるようだが、男もそこは同じ。鼻の脇の陰影は日増しにくっきりとし、すぐ横のほっぺたも垂れ下がり始めた。放っておけば岸信介や佐藤栄作(ぜひGoogleで画像検索してみてほしい)級のブルドッグ顔になってしまう、いや、もうなっていると、慌ててジョギングを始めたが、続かないのが情けない。

これらは目に見える老化だ。自覚症状もある。だが、見えない老化もある。身体の中、とくに脳の老化は目に見えず、自覚も難しい。これだけ高齢者が増え、現実に認知症など「脳の老化」が問題になれば、もう他人ごとではない。

現実に自分の身体はあちこちガタガタだ。頭にガタが来てもおかしくはない。かつては物忘れのひどさを自虐ギャグとして笑い飛ばしていたが、それも若いからできたこと。最近は、まあ大丈夫ですか?と周りの人が真顔で心配してくれる。

そんな現実を直視せねばという一大決心(?)のもと、向かったのが芝浦工業大学の講座「脳の老化ってどんなこと?~からだのサビが認知症を引き起こす!~」(2017年1月)だった。

■老化とは酸化、とくに激しいのが脳の酸化

芝浦工大と聞けば電気や機械の世界を想像するが、教壇に立った福井浩二先生は生命科学科の教授だ。

システム理工学部生命科学科は2008年に設立されたまだ新しい学科で、福井先生も40代の精鋭の研究者だ。「脳の老化」の世界で多くの実績をあげる学者でありながら、ご自分の薄くなってきた頭を笑いのネタにできる尊敬すべき先生だ。定員100名を超える受講者が押しかけ、満杯になった会場で講座は始まった。

福井先生の話をひとことで表現すれば、「老化とは酸化である」ということだ。歳を取るごとに身体の細胞のあちこちが酸化して蓄積していく。それが老化だ。酸化の身近な代表例が金属のサビだろう。「身体がサビ付く」という表現があるが、まさにその通りのことが起こっているわけだ。

中でもサビの一番ひどいところが脳だ。もともと脳の細胞は酸化しやすい物質でできている。それに加え、考えることはもちろん、身体中の機能を司る脳は休みなく働き続け、酸素消費量は身体のどの部位よりも多い。人間の脳は体重の2%だが、酸素消費量は身体全体の4分の1を占める。その結果、他の身体の部位に比べ、脳の酸化は激しくなり、その結果、脳の老化を招くことになる。認知症をはじめ脳の病気の原因になる。

■生理的老化は避けられないが、病的老化は阻止できる

それでは「脳の老化」を防ぐにはどうすれば良いのか。誰でもできる方法が2つあるという。

(1)抗酸化成分の含まれる食事を摂る

抗酸化成分とは、具体的にはカテキン(お茶に含まれる)、ポリフェノール(ウーロン茶、赤ワイン)、そしてビタミンCやビタミンEなどだ。食事をとおしてきちんと摂れば、身体の中で酸化の進行を防ぐことができる。

(2)規則正しい生活をする

もうひとつ大事なのが、規則正しい生活をすること。生活のリズムの乱れは、身体の代謝機能やホルモン、神経のバランスを崩す。食事として摂るべき上記の抗酸化成分以外にも、人間は身体の中に酸化を防ぐ成分がある。それらを存分に働かせるためにも、無理をせず、規則正しい生活することが一番だという。

講義中、福井先生が何度か強調するのが「老化とは避けられないもの」ということだ。ちまたでは「若返り」や「アンチエイジング」が流行り、まるで老化してきた道を逆戻りできるようにも聞こえるが、そんなことはあり得ない。

希望が打ち砕かれるようだが、話には続きがある。「生理的老化」により人間は必ず老化し、寿命を迎える。それはどうしようもない。だが、老化にはもうひとつ「病的老化」がある。これがあるから本来、生きられるのが妨げられ、寿命を縮めてしまう。「病的老化」を防げば、「生理的老化」で定められた寿命を全うできる。

では、「生理的老化」だけならば人間はどれほど生きられるのか。

講義で紹介されたのが、122歳まで生きたフランス人女性の例だ。日本でも1960年代は150人ほどしかいなかった100歳超の人(センテネリアン)が、2016年9月現在では6万5千人まで増えたという。栄養をしっかり摂り、生活環境が良くなったことで「病的老化」が減り、ここまで人の寿命が延びたのだ。

講義の前半では長寿の記録や統計などの事実が地道に積み上げられ、後半では身体(特に脳)が酸化する仕組み、そしてそれを防ぐ方法へと話が移っていくに連れて、初めは「まさか? あり得ないだろう」と思えた100歳超の寿命が現実味を持って迫ってくるから不思議だ。将来、本当に誰もが100歳以上を生きる時代が来るのかもしれない。

抗酸化成分を摂ることや、規則正しく生活することも、決して目新しい話ではない。だが、体系だった福井先生の話により、それがいかに大切なことか、改めて実感できた。

この日、隣の席で受講していた50代の女性は「健康については本当にいろいろな情報があふれていて、何が本当なのかわからず振り回されていました。こうして専門家の先生のお話を伺えると、自分で判断できますね」と語っていた。

※この記事は小学館が運営している大学公開講座の情報検索サイト「まなナビ」http://mananavi.com/からの転載記事です。(文・写真/本山文明)

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