文/印南敦史

写真はイメージです。

50代に突入し、還暦というゴールまでの距離が縮まっていくにつれ、漠然とした不安が大きくなっていくものだ。とりわけビジネスパーソンとして最前線を駆け抜けてきた方は、「このまま枯れていくだけなのだろうか」などと感じてしまうかもしれない。

25年間にわたり、編集者として活躍してきた『50代は気分がいい人がうまくいく』(越智秀紀 著、知的生きかた文庫)の著者も、正体のわからない不安に追われていた時期があったようだ。

しかし、あるとき視点を変えて自分自身を見つめなおしてみると、拍子抜けするほどシンプルな答えに行き着いたのだという。

原因は、加齢でも、仕事の行き詰まりでも、家族関係でもありません。
「不機嫌」が、習慣になってしまっていたのです。
(本書「はじめに」より)

「ならば機嫌をよくすればいいだけじゃないか」と思われるかもしれないが、残念ながら50代の不機嫌は、気合いで改善できるほど生やさしいものではない。しかしそれでも、「そろそろ他人のために生きるのをやめて、『自分の機嫌』を最優先して生きなおそう」と訴えるのだ。

今、私たちが手にすべきなのは、安易な精神論ではありません。
余計な敵を作らず、欲しいチャンスを確実に摑(つか)み取って、残りの人生をハッピーに生きる「武器としての気分」なのです。
(本書「はじめに」より)

では、どうすればいいのか?

たとえば著者が重視していることのひとつが“準備”の必要性だ。ビジョンなきまま安泰な老後を期待するのではなく、会社員という立場にいる間にこそ、「看板がなくても食べていける筋肉」を養っておくべきだということである。

それは、会社への裏切り行為ではない。自分の人生を自分の手でハンドリングし、最後まで責任を持って走り抜くための知恵なのだ。

そのためには、3つのステップを踏むべきだという。

ステップ1 「名刺がなくても語れる自分」を定義する

「もし会社を離れたら、自分のことをなんと名乗るか?」について考えるだけで、これまで当たり前だと思っていた経験が「自分だけの強み」として浮かび上がってくる。「〇〇社の社員」ではなく、「〇〇を解決できる人」と言える準備をしておくべきだということだ。

ステップ2 「自分名義の名刺」をつくって配ってみる

編集者として実績を積み上げてきた著者は独立してすぐ、自身に「出版マイスター」という仮の肩書きをつけたそうだ。

「その名刺を差し出したら、相手はどんな反応をするだろうか」と考えてみたときの“ちょっとしたワクワク感”が、自分を「一個人の人間」へと脱皮させてくれたという。いまはオリジナル名刺も安価でつくれるだけに、試してみる価値はありそうだ。

ステップ3 会社を「実験場」にする

会社で働いているときにあらためて、「自分だったら、このスキルを使ってどう稼ぐか?」と考えてみることを著者は勧めている。

そうやって自分の仕事を見渡してみれば、これまでと同じ事務作業や会議でさえ、すべて「自分の腕一本で生きていくための予行演習」に変わるわけだ。

50代は、「会社に尽くす」段階から、「会社を利用して、自分個人の足腰を強くする」段階へと、舵を切っていく時期です。
会社の看板を外した時、何が残るか。
今のうちからニヤニヤしながら考えておきましょう。
それが、定年後の不安を「最高の楽しみ」に変える、唯一の方法なのです。
(本書53ページより)

またプライベートにおいても、体力とお金があるうちに「いますぐ」やることが大切だという。なにしろ50代に残された「元気に動ける自由時間」は、あと20年前後しかないのだから。

著者自身も、昨年ついに実行したことがあるそうだ。夫婦での、長期滞在を目的とした海外旅行である。「老後の楽しみにとっておくべきか」という迷いを振り切り、意を決して3週間のイギリス旅行に出かけたというのだ。

結果的には「現実的な体力の壁」を実感することにもなったようだが、それでも「間に合ってよかった」と強く感じたそうだ。

老後は「いつか来る遠い未来」ではありません。すでに始まっている「今」の延長線上にあります。
小学生の頃の夢を、「いつか」ではなく「今日」やる。「今すぐ」やる。
その決断だけが、後悔のない人生をつくりあげていくのです。
(本書「はじめに」より)

これもまた、50代のいまだからこそ前向きに考えてみるべきことなのだろう。

『50代は気分がいい人がうまくいく』
越智秀紀 著
847円
知的生きかた文庫

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
7月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

市毛良枝『百歳の景色見たいと母は言い』

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店