伝説に彩られた人物、性空
性空(しょうくう/910-1007)は平安時代の僧侶。
京の貴族の家に生まれ、出家したのちは九州各地の山岳で修行したという。50代半ばで播磨(はりま・兵庫県南部)の書写山(しょしゃざん) に移り住み、圓教寺(えんぎょうじ・姫路市)を開創した。
名僧の誉れ高く、花山法皇をはじめ多くの皇族・貴族から崇敬された。
性空は伝説に彩られた人物である。
その伝説は誕生のときから始まる。性空の母親はそれまで何人か子を産んだが難産が続いたため、性空を宿したときには中絶しようとして毒を飲んだ。が、子は流れず、かえって安産だったという。性空の強靭(きょうじん)な生命力を象徴する伝承といえる。
湯原温泉の開湯伝説
性空は僧として名声が高まるいっぽうで世俗との関わりを嫌い、修行の日々を送っていたが、あるとき重い病にかかった。すると夢のなかに童子があらわれ、温泉の湧く地を示した。
夢から醒めた性空がその地へ行ってみると実際に湯が湧きだしており、そこで湯治をすると病は完治したという。
これが山陽の名湯として知られる湯原温泉(岡山県真庭市)の開湯といわれる。
山岳修行で鍛えた体と温泉のおかげか、性空は98歳の長寿を全うした。性空開基の圓教寺は健康長寿のご利益でも知られている。
文/内田和浩