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中東さんが本イベント用に考案した季節の食材を取り入れた「八寸」。手前から時計回りに「茗荷おから寿司」「小茄子オランダ煮」「和牛ももみそ柚庵漬け」「唐もろこしかき揚」。

「和食っていいね!」をキーワードに、連綿と受け継がれてきた日本料理の奥深い魅力を伝える活動に力を入れているキッコーマン。同社は、そうした活動の一環として、4回にわたって「和食の魅力  料理サロン」と題したイベントを企画しています。

このイベントは、国内外で活躍する日本料理人が、それぞれのテーマで和食の魅力について語り、実際に料理の実演を行なった後、その献立をイベント参加者に楽しんでもらうというもの。

その第1回が、6月4日(土)に、キッコーマン東京本社のKCCホールで開催されました。大盛況だったイベントの模様を紹介しましょう。

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■料理を実演しながら、コツをわかりやすく講義

「牛もも肉の味噌漬けは、味噌だけだと甘いので醤油も加えます。こうすることで味の輪郭がはっきりするんです」
「トウモロコシを蒸すときは、甘味のある内側の皮を1枚残すことで、よりおいしくなりますよ」

軽妙な語り口でイベント参加者の興味をひきつけたのは、今回の講師である京都・花脊(はなせ)の老舗料理旅館『美山荘(みやまそう)』4代目、中東久人(なかひがし・ひさと)さんです。第1回のテーマは「和食と自然」。まずは、『美山荘』を取り巻く豊かな自然や、そうした自然が育む旬の食材、そして『美山荘』ならではの料理に関する談話でイベントは始まりました。

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向かって右が京都『美山荘』4代目の中東久人さん。左はイベントの司会進行役をつとめるフードビジネスプロデューサーの柿澤一氏(かきざわ・ひとし)さん。

このイベントの魅力はなんといっても、料理人が実際に調理する光景を解説付きで見学できることにあります。日本料理界を牽引する一流のプロが実演する料理の技やコツなどを間近で学べるとあって、参加者の表情は真剣そのもの。メモをとる方も多かったのが印象的でした。

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食材の選び方や調理のコツなどを説明する中東さん。

■家庭でもつくりやすい、初夏らしいレシピ

この日、中東さんが選んだのは、初夏の食材を取り入れて、家庭でもつくりやすいように考案した献立。4品の料理を盛り合わせた八寸、焼き物、ご飯と汁物、香の物、デザートの水菓子まで、いずれも『美山荘』の魅力がしっかり感じられるものばかりです。会場では、参加者にレシピが配られ、細かい材料や分量なども確認しながら、中東さんの料理デモンストレーションは進みます。

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司会進行役の柿澤さんも参加者のひとりとなって中東さんに質問していきます。それによって、よりわかりやすい料理デモンストレーションになりました。

初夏の野菜をふんだんに取り入れた八寸は、「茗荷(みょうが)おから寿司」「小茄子オランダ煮」「和牛ももみそ柚庵(ゆうあん)漬け」「唐もろこしかき揚」を美しく盛り合わせたもの。「茗荷おから寿司」について、中東さんが「茗荷は味わいが強い。でも、酢飯ではなく、アミノ酸の旨味の多い『おから』を組み合わせれば、茗荷が主張しすぎることがなく、しかも夏らしいおから料理になります」と話すと、理にかなったわかりやすい解説に、参加者からは「なるほど」と納得の声も聞かれました。

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八寸を美しく盛りつけていく中東さん。

また、「唐もろこしかき揚」は、衣に卵を入れないのが中東流。その理由を問われると「衣に卵を入れると、卵の味が邪魔になってしまいます。旬のトウモロコシの味わいを引き立てるために、衣は小麦粉と水だけでいいんです」と中東さん。しかも、「小麦粉は入れすぎないのがコツ。トウモロコシの粒がくっつくくらいの量で充分」だそうです。

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かつらむきの要領で、トウモロコシの実を芯から削ぎ取る技に参加者の目は釘付けになりました。

今回の献立のひとつ「鱧 (はも)塩焼  赤万願寺たれ」は、京野菜のひとつ、赤く色づいた万願寺唐辛子のソースを添えた、見た目にも美しい料理。下処理が難しい鱧は初心者にはとても手が出せそうにないと思ってしまいますが、「魚屋さんにお願いすれば骨切りまでやってくれますよ」と中東さん。

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奥が八寸。手前は「鱧 塩焼 赤万願寺たれ」。

参加者の多くが“目から鱗が落ちました”と感想を漏らしたのが、焼いた鮎を炊き込んだ「鮎ごはん」の鮎選びについてです。

「鮎は小さめのものを選んでください。小骨が柔らかいから、身をほぐしてご飯に混ぜるときに骨が入っても気にならないんです」(中東さん)

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「鮎ごはん」、汁物は「赤芋茎(あかずいき)生姜風味」、「西瓜の皮 糠漬け」。

『美山荘』ではこの時季、目の前を流れる清流でとれる鮎を使うのだそうです。

水菓子も、ひと手間かけた一品を紹介。走りの西瓜を使った「塩白玉  メロン  黒蜜豆  西瓜ジュレ仕立」は、白玉に和三盆糖と塩の両方を加えるのがポイント。甘味を加えることで果物とのなじみがよくなり、わずかな塩気が素材の味を引き立てます。

じつは、「鮎ごはん」に香の物として添えられた糠漬けは、水菓子で使った西瓜の皮。自然の恵みを無駄なく美味しくいただくことも、中東さんは大切にしています。

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涼やかな水菓子は「塩白玉 メロン 黒蜜豆 西瓜ジュレ仕立」。

■学んだ料理はコース仕立てで試食

実演のあとは、いよいよ試食です。この料理サロンのお楽しみは昼食を兼ねて、料理人(今回は中東さん)が実演した料理をすべてコース仕立てで味わえること。調理の様子を目で見て、音を聞いて、さらには舌で味わうことで理解を深めてもらおうという狙いです。

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試食タイムでは中東さんが各テーブルを回り、参加者の質問などに答えてくれました。

『サライ』からも4名の読者がイベントに参加しました。

「ちゃんととったお出汁の美味しさを感じました。鮎ご飯はぜひ自分でもつくってみたい」と話してくれたのは、近頃、和食への興味が強くなったという鈴木瑛子さん。

「『美山荘』の味を体験してみたかった」と、親子で参加したのは、田中香須子さん・香世子さんです。「母が昔、西瓜の皮の糠漬けをつくっていたんです。中東さんのお料理は美しく美味しいだけでなく、今は失われてしまった味や、懐かしい気持ちを思い出させてくれるという魅力もありました」(娘・香世子さん)

「旬を大切にされていて、自然をお料理に活かしているのが印象的でした」という感想を教えてくれたのは、齊藤崇子さん。まさにそれは、「和食と自然」というテーマを選んだ中東さんが、今回の講義で伝えたかったことでした。

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イベントに参加した『サライ』読者のみなさん。「どのお料理も素材の味が引き立ててあり、本当に美味しい」と大満足の試食会でした。

「自然の中に身を置いていないと、旬というものを感じにくくなってきています。ですから、今回は季節を感じて、旬を料理で意識していただきたかった。五感を研ぎ澄ますことで、みなさんがそれぞれの感覚の幅を広げてもらえたかなと思います」(中東さん)

四季を表現してきた和食、発酵調味料をいかした日本の食文化の素晴らしさを、これからも伝えていきたいという中東さんの言葉でイベントは終了しました。

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中東久人さん(『美山荘』4代目) 1969年生まれ。高校卒業後、フランスに渡り、ホテル経営学、サービスを学ぶ。帰国後、金沢『つる幸』で修業し、『美山荘』へ。野趣あふれる京都の奥座敷・花脊にある料理旅館で、自然と深くかかわる新しいスタイルの「摘草料理」を提供する。

キッコーマン「和食の魅力  料理サロン」の第2回は、10月8日(土)に開催されます。次回の講師は京都の日本料理店『木乃婦(きのぶ)』3代目の髙橋拓児さんです。参加申し込み方法などの詳細は、8月中旬にキッコーマンのウェブサイトに掲載予定です。

取材・文/大沼聡子
撮影/小倉雄一郎(小学館)
取材協力/キッコーマン

 

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