食後酒として楽しんでいただきたい『花垣 貴醸年譜』。この甘い日本酒に合うデザートを、大阪・北区にある割烹料理店『堂島雪花菜(どうじまきらず)』の間瀬達郎さんに作っていただきました。
間瀬さんがイメージしたのは、“抹茶と和菓子”のように互いを引き立てる関係だそうで、出てきたのは「豆乳とブルーベリーのプリン、野菜チップ添え」です。豆乳と葛粉(くずこ)に砂糖を加えて練ってからブルーベリーを入れて茶巾に包み冷蔵庫へ。野菜チップは新レンコン、新甘藷(サツマイモ)、オクラ、かぼちゃ、新ゴボウ、ニンジンなどを使っています。
豆乳プリン自体は甘さは控えめでしたが、『花垣 貴醸年譜』を口に入れると、豆乳の優しい風味が際立ちます。概して、貴醸酒は甘さの割に酸が弱いのですが、プリンに練り込まれたブルーベリーが程よく酸味を補っています。酒のまったりした甘みに対しては野菜チップの塩気が利いて、その相性は抜群です。野菜がもつ自然な甘みもほどよく、とくにレンコンの食感が気に入りました。プリンの下に敷かれたカラメルと、ほんのり熟成した『花垣 貴醸年譜』に出始めたカラメル風味とが、とてもよく合っています。
ところで、和食店で食事をした最後に、よくお茶とデザートが出てきます。正直いえば、お酒好きの私としては、シメはお茶よりもお酒でいきたいと思うのです。たとえば、イタリアンならレモンのリキュール「リモンチェッロ」や葡萄の蒸留酒「グラッパ」、フレンチなら貴腐ワイン「ソーテルヌ」やリンゴの蒸留酒「カルドヴァス」など、海外には食後酒として選べるものが多数あります。
食後酒の習慣がない日本でも、今回の「豆乳とブルーベリーのプリン、野菜チップス添え」のような甘過ぎないデザートと日本酒を出してくれたなら、食後の満足感がより増すに違いないと思うのは私だけでしょうか。
6月末--。清流ではホタルが飛び交い始める季節です。
〈恋に焦がれて泣く蝉よりも 泣かぬ蛍が身を焦がす〉
そんな蛍の淡くはかない灯(ともしび)を愛でながら味わう酒には、また格別な情趣があると思います。今回の『花垣 貴醸年譜』に合うデザートを考案するに際し、料理人の間瀬さんは日本の夏の風物詩「蛍」をイメージしたそうです。気づかれた方はいらっしゃるでしょうか。連なって揚げられたレンコンを川に擬し、プリンに見え隠れするブルーベリーを飛び交う蛍に見立てています。
文/藤本一路(ふじもと・いちろ)
酒販店『白菊屋』(大阪高槻市)取締役店長。日本酒・本格焼酎を軸にワインからベルギービールまでを厳選吟味。飲食店にはお酒のメニューのみならず、食材・器・インテリアまでの相談に応じて情報提供を行なっている。
■白菊屋
住所/大阪府高槻市柳川町2-3-2
TEL/072-696-0739
営業時間/9時~20時
定休日/水曜
http://shiragikuya.com/
間瀬達郎(ませ・たつろう)
大阪『堂島雪花菜』店主。高級料亭や東京・銀座の寿司店での修業を経て独立。開店10周年を迎えた『堂島雪花菜』は、自慢の料理と吟味したお酒が愉しめる店として評判が高い。
■堂島雪花菜(どうじまきらず)
住所/大阪市北区堂島3-2-8
TEL/06-6450-0203
営業時間/11時30分~14時、17時30分~22時
定休日/日曜
アクセス/地下鉄四ツ橋線西梅田駅から徒歩約7分
構成/佐藤俊一