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文/鈴木拓也

板前割烹元祖の店が手がけた家庭料理のレシピ集|『京ぎをん浜作料理教室 四季の御献立』

昭和2年、京都祇園にて創業。本邦初の板前割烹としてカウンターオープンキッチン形式を採り入れ、保守的だった日本料理界に新風を吹き込んだ浜作。

その後も、洋食主体であったホテルに進出、そしてデパート地下階に食料品売り場を出店するなど新機軸を打ち立ててきた。

これまで、天皇皇后両陛下、50人を超える国賓、菊池寛や川端康成といった文豪を始め、数々の政財界・文化人に絶賛されている浜作だが、本領は「旬の最高の食材を、なるべく手を加えずに浜作伝来のお出汁の力を借りて、一切作り置きなし、すべてお客様の目の前で仕上げる、言わば変化球なしのストレート、剛速球勝負」だと、三代目の主人・森川裕之さんは語る。

浜作現店主の森川さん

浜作現店主の森川さん

一方、高級日本料理店とは別の顔として料理教室がある。もともと、日中の試作時に緊張感を出すため友人を招いて、彼らの目の前で調理のプロセスを見せ、試食してもらうことが、きっかけとして始まったという。

料理教室は、平成3年に第1回が行われ、通算2300回、延べ3万人が参加するほどの好評を博している。

そして、このたび料理教室で題材となった料理とそのレシピをまとめた著書『京ぎをん浜作料理教室 四季の御献立』(世界文化社)が刊行された。

本書に掲載されているのは、「大定番」とされる四季折々の献立を主体に、「浜作流ご馳走」という一口カツレツや海老フライなどの洋風和食、くわえて、椀ものとご飯ものもあって充実した内容。自宅にいながらにして、浜作流の料理の秘訣を学べる貴重な1冊となっている。

敷居が高いと思われるかもしれないが、レシピの語り口は平易で、美しい写真と相俟って「作ってみようかな」という気にさせてくれる。参考までに以下2品を紹介しよう。

■味付けの基本の出汁

森川さん「意外に思われるでしょうが、素材の純粋な旨味は十のうち三もあれば良い方で、実は七が雑味、嫌味、クセ味だと私は思います。故に、いかに七の負の味を抑えて三の正味=旨味を出すかということに心を注がねばなりません」味付けの基本の出汁

【材料】
・真昆布:30g
・鮪節と鰹節:50g(合わせて)
・水:1.5リットル

【作り方】
1. 出汁には真昆布(尾札部産)を用いる。濡れ布巾などで汚れを取る。出汁には真昆布(尾札部産)を用いる。濡れ布巾などで汚れを取る

2. 程良い大きさに切って鍋に入れ、常温の水を注いで弱火にかける。程良い大きさに切って鍋に入れ、常温の水を注いで弱火にかける

3. 一番出汁では、鮪節と鰹節(本枯れ血合い抜き)を用いる。一番出汁では、鮪節と鰹節(本枯れ血合い抜き)を用いる

4. 徐々に鍋の温度を上げ、80度前後にして10分間保ち、味見をする。徐々に鍋の温度を上げ、80度前後にして10分間保ち、味見をする

5. 昆布の味を確認したら95度まで温度を上げて、昆布を引き上げる。昆布の味を確認したら95度まで温度を上げて、昆布を引き上げる

6. 鍋の火は最小限までゆるめ、鮪節、鰹節を少しずつ振り入れる。鍋の火は最小限までゆるめ、鮪節、鰹節を少しずつ振り入れる

7. 鮪節、鰹節は何回にも分けて丁寧に振り入れ、鍋全体に広げる。鮪節、鰹節は何回にも分けて丁寧に振り入れ、鍋全体に広げる

8. 固絞りしたネルをかけた水嚢(すいのう)ざるで漉す。絞らず落ちるに任せるように。固絞りしたネルをかけた水嚢(すいのう)ざるで漉す。絞らず落ちるに任せるように

■鯛かぶら

森川さん「(鯛の)上身は煮炊きには向きません。火が通るとカスカスになります。従って、まったりと焚き上げるにはゼラチン質の多い頭を用います。寒くなるにつれ美味しくなる大振りの蕪と炊き合わせ、水尾の黄柚子を添える『鯛かぶら』は京の冬の名物の横綱であります」■鯛かぶら

【材料】
・鯛の頭:一尾分
・小蕪:2個
・酒:3カップ
・みりん:大さじ3
・たまり醤油:大さじ1
・濃口醤油:小さじ1
・薄口醤油:適量
・柚子皮:適量

【作り方】
1. 鯛の頭は出刃包丁で二つ割りし、カマを切り分け、カマには隠し包丁を入れる。鯛の頭は出刃包丁で二つ割りし、カマを切り分け、カマには隠し包丁を入れる鯛の頭は出刃包丁で二つ割りし、カマをカマには隠し包丁を入れる

2. 1を、沸騰した湯にさっと滑らせ、表面に火が通り白くなったら、すぐに氷水に浸け、流水で鱗やぬめりを取り除く。
このひと手間は、霜降りすると言い、生臭みを取り除くテクニック。また湯に通して霜降りをすることで、皮と鱗の収縮率の差により、鱗が剥がれやすくなる。1を、沸騰した湯にさっと滑らせ、表面に火が通り白くなったら、すぐに氷水に浸け、流水で鱗やぬめりを取り除く

3. 蕪は皮を厚くむき、4等分して面取りする。
4. 鍋に、2の鯛と3の蕪を並べ、酒3カップ、みりん大さじ3を入れて、強火にしてアルコール分を飛ばし、アクを取りながら5分程煮る。
生臭みを取るために、酒をたっぷり加える。鍋に、2の鯛と3の蕪を並べ、酒3カップ、みりん大さじ3を入れて、強火にしてアルコール分を飛ばし、アクを取りながら5分程煮る鍋に、2の鯛と3の蕪を並べ、酒3カップ、みりん大さじ3を入れて、強火にしてアルコール分を飛ばし、アクを取りながら5分程煮る

5. たまり醤油大さじ1、濃口醤油小さじ1を加え、強火で汁を掛けながら煮る。
落とし蓋をして煮ると、蒸発した臭みが揮発するのを妨げ、臭みが籠ってしまうため、落とし蓋はせずに煮る。たまり醤油大さじ1、濃口醤油小さじ1を加え、強火で汁を掛けながら煮る

6. 味見をしながら、薄口醤油を少量ずつ足して味を調える。
一度味を濃くつけてしまうと、そこから引き算はできないので、少量ずつ醤油を足して味を調える。
7. 器に盛り付け、仕上げに柚子皮を盛る。

*  *  *

森川さんは、「食べるということは、長い人生にとりまして、最も大切にしなければならないことの一つ」と本書を結んでいる。そして、家庭料理においては、高価な食材を使って豪華にする必要性はまったくないとも。日常的な素材を用いて、丁寧に美味しく作る。そのためのエッセンスが盛り込まれた本書は、食卓をもっと楽しいものとしてくれるに違いない。

【今日のおいしい1冊】
『京ぎをん浜作料理教室 四季の御献立』
https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/19325.html
(森川裕之著、本体1800円+税、世界文化社)

『京ぎをん浜作料理教室 四季の御献立』調理場面の撮影/大道雪代

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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