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揚げたての芝海老のかき揚げを、温かいつゆに浸した「天抜き」。鯖節の出汁を使い、蕎麦のつゆよりはやや薄味の仕上げ。1400円。日本酒は「菊正宗」「諏訪泉」など1合800円~。

プリプリの芝海老がたっぷり「天抜き」で蕎麦前を愉しむ【東京 本所吾妻橋】吾妻橋やぶそば

蕎麦屋の魅力とはなにか。左党にとっては、なんといっても「蕎麦前」の愉しみではなかろうか。蕎麦の前に、ちょっとしたつまみを頼みお酒をいただく。日が高いうちの一献であっても、蕎麦屋にはそれを許してくれる緩やかな空気が流れる。つまみは、板わさ、海苔、玉子焼きなど、蕎麦の種物を使ったシンプルなものばかり。そのひとつに天ぷらがある。

評判の蕎麦屋は天ぷらも旨い。訪ねたのは『吾妻橋やぶそば』だ。主人の梅岡二郎さん(76歳)は藪系老舗店の『かんだやぶそば』で修業後、42年前に店を開いた。店で出される天ぷらは、海老のかき揚げ一種のみ。使われるのは小型の芝海老だ。昔は江戸湾の芝沖(現東京都港区付近)でたくさん獲れたのでこの名がついた。

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梅岡二郎さん
『かんだやぶそば』で17年修業後、1984年に開店。「藪系」伝統の味を引き継ぐ。

「具材は芝海老しか使っていません。藪の天ぷらというと、海老のかき揚げなんですよ」(梅岡さん)

芝海老は一匹ずつ下ごしらえをし、調理しやすいように並べる(下写真)。それを衣とさっと合わせ、太白胡麻油がたっぷり張られた鍋に投入、170~180度で約2分半揚げると完成だ。

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殻をむき背わたを取り、丁寧に下ごしらえされた芝海老。ひとかたまりが1人前で約40g。

かき揚げそのままだと「天種」、温かい蕎麦つゆに浸すと「天抜き」と名が変わる。天ぷら蕎麦から蕎麦を抜いたので「天抜き」だ。

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揚げたて熱々の天種を、蕎麦つゆでいただく。好みで大根おろしを。

箸を進めるたびに海老が出現

鯖節で出汁をとり、やや甘めに仕上げられたつゆに浮かぶ種を少しずつ箸でほぐしながらいただく。ふっくら揚がった芝海老は箸でつつくたびに次々に出現する。天種ひとつに15~16匹の芝海老を使っているというから、満足度は高い。

「天ぷらはセンスですからね。私はあまり上手じゃない。え? おいしかった? それはたまたま上手く揚がったんでしょう(笑)」

かき揚げがほぐれてくると、衣の油が染みたつゆが味わいを深める。汁物と酒との相性のよさを堪能できるのも、蕎麦屋の醍醐味だ。

仕上げは「もりそば」。白神山地(青森県)の蕎麦を使い、主人が毎朝5時から手打ちする二八蕎麦だ。江戸前の辛めのつゆにさっとつけていただく。打ちたての冷たい蕎麦が、ほろ酔い気分を引き締めてくれる。

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手打ちの「もりそば」は蕎麦の香り高く、するりとお腹におさまる。1700円。
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浅草駅方面から駒形橋を渡るとすぐ、「やぶそば」の看板が目印。

吾妻橋やぶそば 

住所:東京都墨田区吾妻橋1-11-2 
電話:03・3625・1550 
営業時間:11時30分〜15時 
定休日:月曜、火曜
交通アクセス:都営地下鉄浅草線浅草駅より徒歩約5分、東京メトロ銀座線浅草駅より徒歩約6分

取材・文/宇野正樹 撮影/齋藤 明

※『サライ』2026年5月号より

5月号の大特集は『天下人の城』

 

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